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デジタルトランスフォーメーションに伴う科学技術・イノベーションの変容(—The Beyond Disciplines Collection—)
エグゼクティブサマリー
JST研究開発戦略センター(CRDS)では、重要な研究開発戦略を立案しようとする過程で、その土台となる主要な科学技術分野を俯瞰する活動に取り組んできた。この結果は、「研究開発の俯瞰報告書」として隔年発行している。さらに、社会や政策等の動向を踏まえた上で分野を越えた全体像として捉えることを目指し、俯瞰報告書の「統合版」を2019年に発行した。
AI、自動化、ビッグデータなどデジタル技術の活用がもたらす新たな価値と変革の観点から、科学技術のさまざまな分野の研究開発に今何が起きているのかを横断的に俯瞰すると、分野の枠を越えて、「デジタルトランスフォーメーションに伴う科学技術・イノベーションの変容」が起こっていることが見て取れる。
研究開発の現場にデジタル技術が浸透することによって、21世紀の科学技術はそのあり方を大きく変容させており、いまは分岐点にあると考えられる。研究対象として、絶えず変動するオープンな複雑系システム(ヒトなどの生命システムから環境・社会システムまで)を取り上げることが増えている。そういった複雑なシステムは確率論で論じることが合理的である(論じざるを得ない)ことから、デジタル技術の進歩によって可能になるような、多数のデータを活用することと相性が良い。
研究室での仮説の立証のような基礎研究と、成果を産業・社会で実装する活動、そして異分野連携や異業種連携、これら3つの関係がより密接になって動きが速まり、その動きのなかから新たな付加価値やサービスが創出されている。
デジタル技術は、科学研究における新たな発見そのものや、研究開発に要する時間とコストの削減にもインパクトをもたらし始めている。特に、創薬研究や新素材研究においてデジタルトランスフォーメーションは着実に取り入れられ始めている。一方で、自然科学と人文学・社会科学の知見を総合的に活用する、社会システムに関連する研究分野においてはまだまだ要素の進展に留まっている。
こうしたデジタルトランスフォーメーションの時代と向き合うには、研究開発システムの変革、そして人や環境に寄り添う社会の構築に向けた研究開発(社会システムの変革)、大学や社会における教育体系の見直し(教育システムの変革)の3つの変革が必要となる。そこで求められる研究開発システムのアプローチは、①問題解決に際し両輪となるデータ駆動アプローチと計算理論的アプローチ、②計測技術、センサー・ロボット技術とAI技術との融合によるデータ取得・収集、③オープンサイエンス・オープンイノベーション型研究プラットフォーム、を構築・活用することである。
※本文記載のURLは2020年3月19日時点