- 環境・エネルギー
社会および産業競争力を支える基盤としての環境リスク評価研究
エグゼクティブサマリー
本書は、戦略プロポーザル「環境調和型プラスチック戦略 ~化学物質としてのプラスチックの安全な管理・活用を推進するための戦略的研究~」の作成の一環として2019年12月3日(火)に開催したワークショップの内容を取りまとめたものである。
欧州を中心に議論が活発化している海洋プラスチックごみの問題は基本的には廃棄物処理の問題である。一方、マイクロあるいはナノサイズにまで細分化したプラスチック片が生態系や人の健康に影響を及ぼす可能性も指摘されている。極小のプラスチック片に実際にどの程度の環境リスクがあるかは未だ不明だが、規制とも関連した議論が始まっており、科学的検討に基づき一定のリスク評価を行うことへの社会的期待は高まっていると考えられる。
また、プラスチックに限らず、多種多様な化成品や農薬、医薬品等、今日の社会において人工的に合成され、データベースに登録される化学物質の数は増加の一途をたどっている。これら化学物質のリスクに基づく管理は互いに協力して取り組むべき課題として国際社会で認識されている(参考:2002年のヨハネスブルク・サミットで合意された化学物質の製造と使用による環境や人の健康への悪影響の最小化を目指す国際的な目標「WSSD2020年目標」)。加えて、多種多様な化学物質の管理は各国・地域の規制とも深く関わり、リスク評価への対応力が産業競争力に直結しうる時代ともなっている。
以上の背景を踏まえ、本ワークショップでは、環境リスク評価研究を取り巻く我が国の現状と今後の課題について多様な専門家を交えて議論を行ない、今後国として向かうべき研究開発の方向性について示唆を得ることを目的とした。具体的には次の3点を主なテーマとして議論を行うこととした。
①海洋プラスチックごみ問題への対応としての環境リスク評価研究
②我が国の環境リスク評価研究体制の在り方
③化学物質の環境リスク評価に関連する挑戦的な基礎研究開発課題
ワークショップはこの3つのテーマに沿って三部構成とした。関連分野で研究や実務に携わる複数の専門家から各テーマを取り巻く現状や今後の課題等について発表ないしコメントをいただき、それらに基づき総合討論を行った。参加者の専門分野はリスク評価、生体毒性、環境毒性、ライフサイクルアセスメント(LCA)、高分子の構造解析や特性評価、環境分析、計測技術開発、海洋学、物理学、生物学、環境法学など多岐に亘った。
※本文記載のURLは2020年3月時点のものです(特記ある場合を除く)。