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平成24年度報告書 社会的期待と研究開発領域の邂逅に基づく「課題達成型」研究開発戦略の立案

エグゼクティブサマリー

 科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)では、かねてより「豊かな持続性社会」を地球規模で実現することを目指し、そうした社会像をできるだけ客観的に具体化するための独自の検討を継続してきた。そして、科学技術が「社会が望み求めること(社会的期待)」に応えることを研究開発戦略の立案にあたっての基本理念とし、過去2 年間にわたり新たな方法論を検討、試行してきた。
 本方法の特徴は、社会的期待の抽出と具体的な研究開発領域 / 課題の抽出を独立に進めた上で両者を結びつける(“邂逅”させる)一連のプロセスを実現したことである。このプロセスではまず、社会的課題※を捉えるために、わが国の現状(FACTS)と今後 10 年程度の国内外の大局的変化の方向性(TRENDS)を見据え、一方 20 - 30 年後に目指すべき社会の姿(VISION)を展望する。そして次に、FACTS、TRENDS から VISION に向かう未踏の道程を具体化するための方策(DESIGN)を、社会的課題に含まれる「機能」に着目して詳細化した。その後、この「機能」を手がかりにして社会的課題と研究開発領域 / 課題の“邂逅”を試みた。研究開発領域 / 課題は、CRDS の技術専門ユニット(システム科学、電子情報通信、ナノテクノロジー・材料、環境・エネルギー、ライフサイエンス・臨床医学の各ユニット)による俯瞰調査結果を用いた。具体的な作業手法としては、各プロセスの客観性や合理性の確保に注意しながら、各種文献調査、専門家ヒアリング、CRDS 内外の専門家による複数のワークショップの開催などを通じて進められた。
 上記二つの独立のプロセスの結果得られた社会ビジョン(社会的期待が解決された結果として実現する社会、以下のリストでは、テーマと表示)、そしてそれらとの邂逅の結果として最終的に集約された戦略立案の検討対象候補は以下の 12 課題(本文ではサブセットと呼んでいる)である。なお、これらの結果に至る邂逅の段階では多数の社会的課題がそれらの機能的要求と要件として詳細化され、さらにそれらを満たす科学技術・研究開発領域との対応関係が整理、精査され、最終的な課題へと集約されたことを記しておく。
 これらの中の候補のうちいくつかは、平成 25 年度より研究開発戦略の立案に向けてさらに詳細な検討が行われる予定である。
 本報告の方法論による効果は、今後作成される研究開発戦略の提案、それに基づく具体的な研究開発施策の策定、及びその実施と成果の評価を検証することによって初めて明らかになるといえる。その際に特に重要になると思われる観点は、従来手法では見出し得ない、あるいは見出すのが困難な研究開発領域 / 課題が提案できたか、さらにそれらが科学技術イノベーション、そして社会の課題解決につながったか等である。また、こうした研究開発戦略を適用したことによるインパクト評価と政策評価の方法論も残された大きな課題である。
 本報告は、CRDSが試みた新たな研究開発戦略の立案に関する検討の概要を速報版として取りまとめたものである。詳細については、追って最終版として報告する予定である。