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海外調査報告書 欧州における"Foresight"活動に関する調査−CRDS研究開発戦略の立案プロセスに活かすために−
エグゼクティブサマリー
政府負担による研究開発投資の社会・経済的効果が、先進諸国においては特にその厳しい財政状況を背景として、これまで以上に強く期待されている。そのため、科学技術イノベーション政策の推進にあたっては、研究開発の成果が社会の課題解決につながりうるのか、あるいは産業化に結びつき経済的効果をもたらすのか等についての将来ビジョンを示すことが求められている。
これに応える方法の一つとして、"Foresight"活動がある。"Foresight"とは、「先見の明」「(将来に対する)洞察力」「予感」「(将来の)展望」「(将来を見越した)配慮」等の意味を持ち、「予測」に比べ、より広がりを持った語である。科学技術イノベーション政策における"Foresight"活動は、欧州を中心にこの10年ほどの間に、それまでの技術予測という枠組みを超えて、「社会と技術の双方を視野に入れた将来ビジョンを描出する」という形で盛んに行われるようになった。政策形成に関わる関係者の間での議論を深める、あるいは問題意識を共有することを主要な目的として実施されていると言うことができる。
科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)では、研究開発戦略の立案にあたり、社会が何を求めているか(=社会的期待)を把握し、これを研究開発領域と結び付ける(=邂逅)ことを基本方針としている。社会的期待の把握には、「どういう社会が望ましいのか」を展望することが不可欠である。科学技術イノベーション政策における"Foresight"活動の歴史や手法を知ることによって、CRDSにおける研究開発戦略の立案プロセスの検討と実践に活かしていくことができると考えられる。
第4期科学技術基本計画(2011年8月に閣議決定)においては、重要課題の達成に向けた科学技術イノベーション政策の推進を大きな柱の一つとしている。重要課題の達成に向けた施策の重点化のためには、課題に対する深い理解と洞察が必要である。"Foresight"活動に関する知見は、課題達成型と呼ばれる第4期計画下での施策展開において重要なものとなると考えられる。
以上のような認識に基づき、CRDSでは、欧州の公的機関で実施されている"Foresight"活動について調査した。本報告書は、その調査結果を取りまとめたものである。