科学技術未来戦略ワークショップ報告書
- 横断・融合
2011年3月
CRDS-FY2010-WR-12
持続性時代におけるイノベーションに向けた“全体観察による社会的期待の発見”
エグゼクティブサマリー
わが国の今後の経済成長の発展には、課題解決型イノベーションに向けた国家戦略が重要であることが、新成長戦略や第4 期科学技術基本計画の検討の中で指摘されている。公的資金によって行われる課題解決型の研究開発は、社会的な期待に応えるものである必要があるが、その社会的期待はどのようなものなのか、またそこから「課題」は誰がどのように抽出・決定するのかの議論はまだ不十分な状況である。さらに、科学に対する社会の要請は、豊かさを求め開発を目的としたものから、持続性社会の実現を脅かす脅威に対して、どのような行動が必要なのかの科学的知識の提供へと変化してきており、持続性時代における科学の貢献が求められてきている。 独立行政法人科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)では、科学技術が取り組むべき課題のベースとなる"社会的期待"は、顕在化された人々の要望や研究課題の集合体などの中から政治・行政的な判断によって抽出・選択されるようなもののほかに、潜在的な社会的期待をいち早く発見することが、「豊かな持続性社会の実現」に向けた今後のイノベーションのカギとなるのではないかとの仮説を持ち、その方策について検討を進めている。CRDS では、このような「潜在的な社会的期待」の発見に対して、科学はどのような貢献ができるのか、また科学者にはどのような行動が求められるのか、などについて人文・社会科学、自然科学など様々な分野の研究者や産業界の有識者などで議論するワークショップを開催した(I部:2010年12月4日開催)。また後日、少人数の有識者によるワークショップのフォローアップ会合を開催した(II部:2010年12月20日)。本報告書は、この2回の会合での議論について、とりまとめたものである。