- 情報・システム
研究開発の俯瞰報告書 システム・情報科学技術分野
エグゼクティブサマリー
システム・情報科学技術(IT)分野は汎用的な技術分野であり、さまざまな分野においてその効果を発揮し、多様な領域の問題解決や新産業創出を加速する。エネルギー・交通などの社会インフラや行政・住民サービスといった社会システムを改善し、情報通信産業のみならず、製造業やサービス業、農業などの効率化・高付加価値化を実現する。ITによる変革は、ナノテクノロジーやライフサイエンスなどの科学技術の発展にも大きく貢献している。国の安全保障においてもITの役割が重要となり、ITがこれまでの外交、軍事、経済などの政策手段を大きく変革しつつある。
本俯瞰報告書では、近年の人工知能(AI)技術の進化と社会への浸透を鑑みて、ITが目指すビジョンとして「AI共生社会」を掲げた。このビジョンのもと、「さまざまな場面で信頼・安心してAIと共創」「科学研究など知的活動のAIによる変革」「人とAIの共創による複雑な社会問題の解決」「社会インフラのサステナブル化」の四つのサブビジョンと、システム・情報科学技術の進化における「知能革命を支えるAIインフラ」「AIの自律化・フィジカル化・汎用化」「AIトランスフォーメーションと多様化するリスクへの対応」といった技術トレンドとの両方の観点から研究開発を俯瞰した。
当分野の俯瞰は、基盤レイヤーと戦略レイヤーの2層で捉え、戦略レイヤーに含まれる研究開発領域として「エマージング性」「社会の要請・ビジョン」「社会インパクト」の3点を選定基準に、戦略的に重要度が高い38の研究開発領域を特定した。科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)では、この38の研究開発領域を「人工知能」「ロボティクス」「セキュリティー・トラスト」「コンピューティングアーキテクチャー」「通信・ネットワーク」「数理科学」の6俯瞰区分にまとめた。
社会・経済の動向を含めたわが国の置かれた環境、現在の日本の取り組み状況やポジションを踏まえると、単に技術発展の方向性として取り組むだけでなく、国際競争力を構築・維持するための作戦・シナリオや、国として取り組むべき意義を明確に持った研究開発投資戦略が必要である。本俯瞰報告書では「強い技術を核とした骨太化」「強い産業の発展・革新の推進」「社会受容性の活用による社会課題の先行解決」「経済安全保障上の重要基盤技術の確保」の四つの基本的な推進シナリオを提示し、CRDSが考える今後のあるべき方向性・展望を顕在化させるため、この四つの考え方に基づいて国として推進すべき10の研究開発課題を抽出した。
システム・情報科学技術分野の研究開発戦略の立案には、技術トレンドだけでなく、さまざまな形での、社会とシステム・情報科学技術との相互作用を理解する必要がある。特に、科学技術の進展と雇用の関係、技術導入の差異が経済的格差に与える影響、科学技術がもたらす倫理的・法的・社会的な問題を常に意識すべきである。これらの動向に対してシステム・情報科学技術が適切な発展を遂げ、健全で持続可能な社会を構築するためには、多様な観点からの想像力ある検討が必要である。本俯瞰報告書はそのために必要ないくつかの視点を調査・分析によって中立的な立場から提供するものである。
※本報告書の参考文献としてインターネット上の情報が掲載されている場合、当該情報はURLに併記された日付または本報告書の発行年月の1ヶ月前に入手しているものです。
~分野別俯瞰編~
- 分野別俯瞰編
~領域別動向編~
- S1 人工知能(AI)
- S2 ロボティクス
- S3 セキュリティー・トラスト
- S4 コンピューティングアーキテクチャー
- S5 通信・ネットワーク
- S6 数理科学