研究者:日永田 智絵(奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科 情報科学領域 助教)
解くべき課題
感情を持つロボットを活用して、感情を大切にできる社会をつくる
感情が大切なものとして扱われ、自分の感情とうまく付き合っていける社会をつくりたい
- すべての感情について価値を捉え直す
- 負の感情や感情的なふるまいが否定的に扱われている
- 子どもの感情の育ちに立ち止まり向き合う余裕がない
- 感情を安心して語り受け止めてもらえる相手を
- 専門家につながるにはハードルが高い
- 些細なことを話せる相手がいない
- 話し相手が人間であるが故に生じる不都合の解消
- 相手との人間関係を憂慮して相談ができない
- 相談を受けた側に、不利益や危害が及ぶことがある
取組のポイント
人間が感情を獲得する仕組みをもとにしたモデルを使って「感情を持つロボット」を開発し活用する。
- 形だけの相槌ではなくなり、心のこもった寄り添いができる
- ロボットは人間関係の外側の存在である。家族にも友達にも話せないことも、ロボットになら話しやすい
- ロボットは、感情的な応答を制御することができ、怪我を負うリスクもない
- 感情を育てるロボットを開発することを通して、「人間の感情」そのものの理解を深める
取組内容
感情モデルを実装したロボットを導入し、現場のニーズに合うか検討しながら研究データを得て、社会実装に向けた開発を進める。
- 僧侶も人間であるが故に相談者から不利益を受けることがある。不利益を受けずに相談者の心に寄り添った相談相手になることのできるロボットの社会実装を目指す。
- 相談者に対して僧侶がもたらす効果と聞き役の僧侶に起こる変化を、観察と身体的データ(心拍、呼吸等)から解析する。
- 解析したデータより明らかにした聞き役の行動を実装した”僧侶役”感情発達ロボットを開発し、適切なアクションが返せるか等の検討を行う。
- 支援者は子どもの感情に寄り添いながら適切な処理や表現の獲得を手助けしているが、支援者も人間なのでつい怒り返してしまったり児童から攻撃を受けたりすることがある。そこで、発達障がい児に寄り添い導くことのできるロボット、もしくは支援に役立つロボットの社会実装を目指す。
- 感情モデルを有するアバターとインタラクションを行った際の子どもに起こる変化を、観察と身体的データ(心拍、呼吸等)から解析する。
- 解析したデータより明らかにした寄り添い導くための行動を実装した感情発達ロボットを開発し、子どもの行動変容の調査を行う。
- 家庭内での一人ひとりの頑張りや、喜びや嬉しさ、悲しみや怒りなど全ての感情を肯定的に受け止めてくれるロボットの社会実装を目指す。また、研究を通じてどのような寄り添いが効果的かを明らかにし、広く社会に発信することで、人間同士での寄り添いあいの促進や、感情を大切にできる社会づくりに貢献する。
- 家庭内での人の感情を観察と身体的データ(心拍、呼吸等)から解析する。
- 解析したデータより明らかにした、感情に寄り添う行動を実装した感情発達ロボットを、家族利用のあるゲストハウスに設置し、効果を測定する。
- 研究と実践を通じて明らかになった効果的な寄り添い方法を、社会に発信する。
シナリオの関係者
- 青江 覚峰(株式会社なか道/緑泉寺)
- 浦上 宰理(NHKエデュケーショナル)
- 小笠原 舞(合同会社こどもみらい探求社)
- 土橋 優子(株式会社スコーレ)
- 西村 文考(株式会社Nプランニング)
- 村田 衡亮
- 丸山 桃加(コーディネーター/ハーチ株式会社)
- 熊谷 香菜子(科学コミュニケーター/元日本科学未来館)