科学技術未来戦略ワークショップ報告書
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中長期の自然災害・気候変動リスクに対応する気象・気候予測の今後

エグゼクティブサマリー

豪雨、洪水、熱波や寒波などの自然災害がもたらす社会的・経済的損失は極めて大きく、現代社会にとって依然として重大な問題となっている。昨今はそうした自然災害をもたらす極端気象が気候変動により頻発化、激甚化する可能性も指摘されている。こうした事態は我が国にとって深刻な問題であるのみならず、SDGsの達成に向けた世界の取組みにも大きな障害となる。加えて産業界には、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への対応として、気候関連リスクの財務上の影響を把握・開示することも期待されている。このような背景から、自然災害および気候変動に伴うリスク(特に物理的影響)を可視化し、それらを対策立案や意思決定、行動変容に繋げていく必要性が認識されている。

リスクの可視化には予測技術の高度化が必要である。昨今は、集中豪雨や台風の兆候をより早期に探知・予測し対策につなげる「数分~数日」のスケールと、各種産業や行政の戦略策定や計画策定等に必要な「数週間(季節内)~10 年規模」のスケールの予測に関するニーズが高まっている。現象理解、観測技術、計算機器、計算手法等の大幅な進展によって予測精度は大きく向上しているが、これらのニーズを満たすには更なる精度の向上が求められている。特に後者の「数週間(季節内)~10 年規模」の予測については、従来は時間スケールを区切った形での取組みが主流な中、欧米ではそれらをシームレスにカバーするような次世代の予測モデルに関する研究開発の動きも見られる。日本としてもこの分野にどう取り組んでいくべきかについて早急な検討が必要である。

以上を踏まえ、本ワークショップでは「季節内~10 年規模」の予測精度向上に注目し、今後国として取り組むべき研究開発の方向性や具体的な課題、その推進方策について議論を行った。議論は「数週間(季節内)~10年規模」の時間スケールでの「気候予測」、得られた予測情報を使って生態系や人間社会への影響を予測・評価する「影響予測・評価」、ならびに基盤となるデータ、人材、異分野連携、産官学連携などの「基盤・横断」の3つのセッションに分けて行った。

※本文記載のURLは2022年3月時点のものです(特記ある場合を除く)。