科学技術未来戦略ワークショップ報告書
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脳型AIアクセラレータ~柔軟な高度情報処理と超消費電力化の両立~

エグゼクティブサマリー

 本報告書は、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が令和2 年11 月28 日に開催した科学技術未来戦略ワークショップ(WS)「脳型AIアクセラレータ ~柔軟な高度情報処理と超低消費電力化の両立~」に関するものである。
本ワークショップは、柔軟な高度情報処理を超低消費電力で行う脳型AIアクセラレータに関して、我が国の科学技術の強化に有効な研究開発戦略策定の一環として開催した。ここでは、脳型AIアクセラレータの研究開発として今後取り組むべき重要な研究開発課題や、それを実施する研究開発の体制・仕組みなどに関するCRDSの仮説を提示し、高度で効率的な情報処理を要求する応用分野の現状と技術的課題、高度情報処理に向けた脳科学、人工知能、数理科学の研究動向、次世代のAIチップ開発の現状、などについて話題提供を基に、総合討論で我が国が注力すべき脳型AIの研究領域や、脳科学、数理科学、情報科学、ナノテクノロジー・材料分野などの異分野を連携させる仕組み、アカデミアと産業界の連携の仕組み、コミュニティ形成、人材育成、国際連携などについて議論した。
 CRDSの仮説として、①現状の深層学習や第4世代AI研究の課題の解決に資するように、日本の強い脳科学、数学・数理科学、材料・デバイス技術と情報科学を強力に連携させて、AI処理のハードウェア化を目指した研究開発を進めること、②脳の細胞や神経回路などの構造や機能を模倣した情報処理モデルを構築するとともに、その動作に適する材料・デバイス・回路の研究開発を進めていくこと、③これらを統合して脳型AIアクセラレータとして実現していくことで、新たな産業の創製、人工知能研究、脳科学、材料・デバイス・回路研究の強化に繋がること、などを示した。
 総合討論では、CRDSの骨子案や話題提供の発表、事前アンケート結果を踏まえて、我が国が注力すべき脳型AIの研究領域、脳科学、数学・数理科学、情報科学、ナノテク・材料技術の異分野を連携させる仕組み、アカデミアと産業界との連携の仕組み、コミュニティ形成、海外連携に関して議論を行った。その結果、人間らしい知能を考える上では身体性が重要であり身体込みで脳を考える必要があること、量子コンピュータにおける量子優越性のように脳型コンピュータを使えばある点で古典的コンピュータを抜けるという定量的評価指標が必要なこと、新しいデバイスからアルゴリズム・計算論に持っていく方向と、数理的に計算論を考えてアルゴリズム・デバイス開発へ展開する方向の両方の流れが必要であること、ニューロモルフィックキットを配布し様々な人に試してもらうって裾野を広げる方向が必要であること、などの方向性が示された。
 ワークショップでの議論を踏まえ、CRDSでは今後国として重点的に推進すべき研究領域、具体的な研究開発課題を検討し、研究開発の推進方法も含めて戦略プロポーザルを策定し、関係府省や関連する産業界・学界等へ提案する予定である。

※本文記載のURLは2021年2月時点のものです(特記ある場合を除く)。