科学技術未来戦略ワークショップ報告書
  • バイオ・ライフ・ヘルスケア

アトミック・セル・ダイナミクス

エグゼクティブサマリー


CRDSでは、近年の細胞内に関する新しい技術と現象の発見等、さらに世界の Human Cell Atlas(HCA)やGenome Project-write(GP-write)、Synthetic Yeast2.0(Sc2.0)などの構成的な合成生物学プロジェクト事例の先を見据えると、まだまだ細胞内の機能素子の時空間情報を定量的かつ網羅的に計測できる技術が必要であろうという仮説を提示した。それに対し、関連する研究について16名の有識者から話題提供を行って頂き、最後にコメンテータ(アドバイザー)も交えて議論を行った。議論の結果を下記にまとめる。

研究の方向性
以下の4 つのような意見が出た。これらは連関している。
●分子生物学のように遺伝子をノックアウトして表現型を見ながら機能を探る研究だけでなく、生命現象に関して定量的な議論をしていくことが重要である。
● 生物を物理学的視点でも考えることができるようになりつつある。非平衡状態を考えることも必要である。
●単一分子の相互作用だけでなく、LLPS のような超分子状態で研究していくという視点が重要である。
●細胞内での分子やオルガネラ等の位置と時間(過渡的)の生命科学が必要になってきている。

研究推進方法
国のプロジェクトにおける異分野連携や先端技術・機器プラットフォーム、研究総括の目利きやディレクションの重要性が示唆された。
● 個別の技術とか個別のバイオロジーとしては世界的な結果があるが、それを連携させるところが日本は弱い。世界の趨勢はそういうところから新しいものが出てきているが、ことごとく後追いになってしまっている。
● 科研費で1 人のPI が頑張ってもできないことをやる構造をつくらないと、世界と競争できなくなってきている。高価な先端装置をみんなでシェアするとか、データの数理情報的な解析をできるメンバー・拠点を組み込む等のネットワーク(プラットフォーム)が必要。
● 幅広い異分野の研究者に手を挙げてもらうための仕掛けを入れるのが望ましい。例えば、公募前に異分野研究者同士で話す機会を設ける、生物と物理の総括を2 人置く、など。
● 加えて、研究者間の連携が促進される仕組みが必要。例えば、計測とバイオロジーと、あるいは理論とAI とが組み合わさったチームで応募することを求める、プロジェクト途中での連携を促す、など。
● バーチャル研究所長としての研究総括の脚本、演出、ミキシングが何より大事。

※本文記載のURLは2020年3月時点のものです(特記ある場合を除く)。