俯瞰ワークショップ報告書
  • 情報・システム

機械学習型システム開発へのパラダイム転換

エグゼクティブサマリー

 現在、人工知能の第3 次ブームと言われるが、これを牽引しているのは、深層学習(ディープラーニング:Deep Learning)をはじめとする機械学習技術である。そして、単に言葉が流行っているのではなく、機械学習技術は様々なシステムに埋め込まれ、実社会での応用・実用化が急速に広がっている。

 この機械学習技術はシステムの動作を大量データから帰納的に定義するものであり、プログラムコードを書いてシステムの動作を定義する従来の開発スタイルとは大きく異なっている。そのため、従来ソフトウェア工学として構築・整備されてきた方法論・技術は必ずしも使えず、システムの要件定義や動作保証・品質保証にも新しい考え方が必要になる。システム開発のパラダイム転換が起きているのである。

 このパラダイム転換によって、システム開発に必要な人材スキルや方法論が刷新され、この変化に追従できないと、ソフトウェア産業やシステムインタグレーターは競争力を失いかねない。また、動作保証・品質保証等の考え方が整備されないまま、機械学習技術を組み込んだシステムの社会実装が急激に進むと、そこで発生した問題や事故が思わぬ社会問題化する懸念もある。

 このような産業界にも大きなインパクトを与え得る「機械学習型システム開発へのパラダイム転換」に際し、機械学習技術そのものの研究開発が活発なのに比べて、それを組み込んだシステム開発の技術・方法論の研究開発については、まだ十分な取り組みが推進されていないように思える。

 本ワークショップでは、上述の問題意識を共有し、次の3点を目的として議論した。

(1) 機械学習型システム開発へのパラダイム転換における課題の全体像をつかむ
(2) それらの課題に対する取り組みがどこまで進んでいるか、状況を把握する
(3) 取り組みを加速・強化するための方針・施策についてアイデアを集める

 まずCRDSからワークショップの趣旨説明を行い、問題意識の共有と事前調査に基づく課題の全体像のイメージを示した。次に、外部から招いた5名(丸山宏氏、中島震氏、谷幹也氏、藤吉弘亘氏、佐藤洋行氏)に発表いただき、この問題に対する考え方や具体的な取り組み事例・状況等を把握した。それを踏まえて、上記3点に関する総合討論を行い、課題の全体像、および、取り組みの必要性や方向性をまとめた。