海外調査報告書
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海外の研究開発型スタートアップ支援

エグゼクティブサマリー

 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)では、我が国の科学技術イノベーションに係る政策の企画立案に資することを目的として、世界の主要国の科学技術イノベーションの動向を定常的に調査分析し、その結果を公表している。

 本報告書は、この業務の一環としてJST/CRDS が行った主要国における研究開発型スタートアップの支援の状況についての調査結果をとりまとめたものである。

 近年のICT 技術の急激な進化を背景に、人、もの、資金、情報が瞬時に結びついて、新たな付加価値が産み出されるようになり、また、人々の関心も「もの」から「コト」へと価値観の多様化が進んでいる。研究開発型スタートアップは、開発リスクを伴う研究開発を進め、その成果をスピーディにビジネスモデルに結びつけることにより、イノベーションを牽引していく重要な役割を担っている。我が国においては、成長戦略の鍵を握る科学技術イノベーションの担い手としてスタートアップに対する期待が高まっており、スタートアップをとりまく環境や基盤の継続的な整備が求められる。

 JST/CRDS では、一昨年、主要国における橋渡し研究基盤整備の支援として、ドイツ、米国、英国、フランスにおける橋渡しシステムの代表例について調査を行ったが、今般、さらに視点を広げて各国のスタートアップをとりまく状況について把握するために、関連する基本政策や支援制度等を中心に調査を行った。また、スタートアップの事例をとりあげて現地に出向き、支援制度等がどのように活用されたのかについても調査した。調査対象国については、「スタートアップ国家」と称されるほど、スタートアップを基軸とした経済成長を目指すイスラエルを加えた。また、最近急速な変化を見せている中国については、目が離せない状況にあるが、ここでは事例調査として清華大学と深圳の状況についての報告にとどまっている。なお、海外調査に先立って、日本国内の状況に関する文献調査や関係者へのヒアリングを行い、問題意識の抽出を行った。

 調査対象国のスタートアップをめぐる状況は、各国それぞれの経済や雇用の状況によっても大きな違いが見られる。特に研究開発型スタートアップでは、開発リスクを伴う研究開発を継続できる、ステージに応じた多様な資金源の存在、それらを呼び込む「目利き」機能の発揮、スタートアップにかかわる人材の厚みとネットワークなどが鍵になっており、各国それぞれに取り組みが進んでいる。また、地方自治体の果たす役割も大きい。現在のところ、米国やイスラエルのように起業に挑戦する文化や慣習に富み、早くからエコシステムの構築に取り組んだ国のアクティビティが高い状況であるが、それ以外の国においても、失敗例に学びつつ成功例を積み上げていくなかで、「目利き」人材が育ち、成功した者が次のスタートアップを支援するといった厚みを持ったエコシステムの醸成が進むものと考えられる。

※報告書本文中の外部機関リンク先については全て2018年3月31日時点の情報