調査報告書
  • 環境・エネルギー
  • バイオ・ライフ・ヘルスケア
  • 横断・融合

海洋生物多様性の把握に関する科学的ニーズと先端計測技術シーズの邂逅

エグゼクティブサマリー

 我々は食物や資源など、海洋から多くの生態系サービスを得て豊かな生活を送っている。このサービスは、海洋生態系のバランス、そして関連する物質循環サイクルの健康度に依存しているが、現在、多くの地域で気候変動、水質汚染、乱獲、生息域破壊、侵略的な生物種の持込みなど、外因的なインパクトに脅かされ、また、その状況を正確に捉えているだろうか、との指摘がある。したがって、「海洋生物多様性の把握」は、生態系の健康度、管理等海洋政策の適正さを評価する上で重要であり、これを観測・モニタリングする手法の高度化、極限化、普遍化は、科学技術に対する大きな期待となっている。
 科学技術振興機構研究開発戦略センターでは、「計測は科学の母(mother of science)」と位置付け、どんな学問分野においても、計測の限界に突き当たると科学の進歩が止まることを示してきた。現在の「海洋生物多様性の科学」をさらに深化させるには、その計測(海洋生物多様性計測学)を発展させること、現在の計測技術の限界を突破することが重要と言える。また、新しい計測技術の創出には、計測ニーズと技術シーズの邂逅がポイントであることを示している。今回、海洋生物多様性の把握に関する科学的ニーズを体系的に整理し、これをメジャランド(測定可能な物理量)として設定することで、先端計測技術開発の可能性を検討することを計画した。
 本調査は、海洋生物多様性の科学の深化を追求する研究者(海洋生物研究者)が、現在、解明を深化させるために、限界となっている課題を明確にし、その打破に向け、必要とされる計測技術のイメージを浮かび上がらせることを目的とした。