国際比較調査
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G-TeC報告書「先端研究基盤とグリーンイノベーション」

エグゼクティブサマリー

 第4期科学技術基本計画の中で、成長をもたらす原動力として「グリーンイノベーション」及び「ライフイノベーション」という二つの柱が定められた。エネルギー・環境を対象とするグリーンイノベーション、医療・介護・健康を対象とするライフイノベーションが、震災からの復興と並び、5年間(2011年〜2015年)の目標として明確に位置付けられている。科学技術によるイノベーションを重視する動きは、米欧にも共通して見られる。地球温暖化やグローバルな競争の激化など、高度で複雑な課題が顕在化し、その解決には従来の延長線上に無い新たな取り組みが必要となることが背景にある。社会課題の本質的解決に向け、未踏の科学原理や革新技術の創出が求められている。イノベーションにつながる新たな科学原理や革新技術を創出する場合、未踏領域での挑戦を可能にする先端研究基盤が重要な役割を果たす。
 このため、日本では第4期科学技術基本計画において、重要課題達成に向けた施策として「科学技術の共通基盤の充実、強化」が掲げられ、「広範かつ多様な研究開発に活用される共通的、基盤的な施設や設備について、より一層の充実、強化を図る」ことが謳われた。米欧でも、研究基盤を構築・強化するための固有の方策が展開されている。しかしながら一方で、イノベーションを促す先端研究基盤の整備には、継続した投資が必要になる。逼迫する財政状況は各国共通しており、こうした中で一定規模の投資を確保するために、「研究基盤の重要度を評価し、適正な投資規模を定め、得られる効果を最大化する取り組み」が強く求められるようになってきた。
 したがって、これらの動きを詳細に分析すれば、「研究基盤の重要度を評価し、適正な投資規模を定め、得られる効果を最大化する」、さらには「先端研究基盤とイノベーションをつなぐジョン&戦略を策定する」ための有効なエビデンスが得られることになる。そこで上記想定に基づき、「先端研究基盤とイノベーション」をテーマとする「G-TeC(Global Technology Comparison)」を行った。
 G-TeCは、重要な科学技術動向に焦点を当て、各国・地域の状況を分析することで日本のポジションを確認し、今後取るべき戦略の立案に貢献することをミッションとする。調査には、公開情報に基づく基礎調査、米欧での海外現地会合などの手法を用いた。第一に、各国動向を概観することで、先端研究基盤について特徴的動きが見られる地域として、米国、英国、欧州を選定した。第二に、基盤整備を推進している中核機関を特定し、各機関が主導する研究基盤の整備状況を把握した。第三に、その中から、先端研究基盤を活用したイノベーションの取り組みを抽出した。その上で、第四に、これらの動きを詳細に分析することで、研究基盤への投資効果を高めるための要件を検討した。