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「組織における知識創造支援に関する理論と技術の構築」【補遺】コミュニティの活力を引き出すアクションリサーチ ~持続可能な社会システムを支える新たな情報技術研究のかたち~

エグゼクティブサマリー

 組織における知識創造支援に関する理論と技術を構築していくためには、現場で求められる「知識・スキルの蓄積・鍛錬」「コミュニケーションの円滑化」「情報システム」を、要素に分解することなく、三位一体で研究するという、新しい研究ビジョンをもって研究に臨む必要がある。
このビジョンの下で進められる研究は、研究成果が適用される現場で組織に変革を起こしながら進められる“アクションリサーチ”である。
 この研究には、研究者だけでなく、現場の担当者やステイクホルダが巻き込まれる。研究が目指す目標を、研究者以外の関係者とも共有するため、新しい研究推進方法は、“物語アプローチ”をとる。“物語アプローチ”とは、専門分野の文脈ではなく、現場の文脈で作られた物語で目標を共有する方法をいう。物語を研究開始前に作成し、それを現場で再構成しながら目標を目指す。その成果は物語として記録され、また他の現場で再構成されて活用される。
 この研究ビジョンは、持続可能な社会システムを支える新しい情報技術研究の形を希求する。その特徴は、“人を含む系を扱う”“社会の持続可能性を意識した”研究である点にある。これは、CRDS が提唱してきた「持続性科学」や「知識を生産・活用するための科学」構築に向けた研究の具体例でもある。現象に内在する普遍性(不変性)を追求する研究から、変化に適応するために不確定な状況の中を探索学習する合理的な枠組みを追求する研究へと研究の姿勢に転換を促す。
 我々は提案すべき基本コンセプトを先の戦略プログラムに表現し、これをベースドキュメントとして具体的なアクションプランについて関係者と議論を積み重ね、戦略プログラムを具体化するための新しい研究ビジョン(研究を進める上での具体的な考え方)を成果としてまとめた。