- 材料・デバイス
研究開発の俯瞰報告書 ナノテクノロジー・材料分野
エグゼクティブサマリー
ナノテクノロジー・材料分野は、ナノメートルスケールにおける物質の構造や機能を追究するナノサイエンスを基盤とし、計測や合成、シミュレーションなどの基盤技術を用いながら、人類の広範な活動を支える「材料とデバイス」(マテリアル)の創出を担う基盤的分野である。
その応用範囲は、エネルギー・環境、医療・ヘルスケア、情報・通信、社会インフラなど広範に及び、わが国の産業の柱となるだけでなく、気候変動への対応や、社会の安全・安心とレジリエンスの確保、一人ひとりのWell-beingの実現など、イノベーションによる様々な社会課題への貢献が期待される。
本報告書では、ナノテクノロジー・材料分野を「エネルギー・環境応用」「ライフ・医療応用」「ICT・エレクトロニクス応用」「社会インフラ・モビリティ応用」「物質と機能の設計・制御」「共通基盤科学技術」「社会実装へのガバナンス」の7つの区分に構造化した上、その中に30の領域を設定して、研究開発動向を概説している。
本分野の世界的な研究開発トレンドとして、一つ目に、社会の持続可能な発展に向けた技術開発が挙げられる。例えば、カーボンニュートラル実現のため、エネルギー変換・貯蔵やCO₂回収、省エネ化技術が進展している。資源循環に向けては未利用資源の活用やリサイクル、易解体設計が推進されている。
二つ目に、経済安全保障の観点から、産業の基幹となるサプライチェーンや、現在または将来の重要技術を確保していく動きが活発化している。蓄電池、発送電網、半導体、量子技術などに官民投資が集中し、次世代情報通信やAI技術の牽引が図られている。
三つ目に、材料・デバイス開発を支える研究開発基盤において、データ科学やAIとの融合が進展・定着してきている。AI駆動の物質探索、高速シミュレーション、自律実験、データ基盤構築など、新たな研究インフラが各国で整備されている。
本報告書では、本分野を取り巻く社会・経済の動向と、研究開発動向を俯瞰的に捉えた上で、今後わが国が注目すべきと考える以下の9つの研究開発テーマを提示した。
- カーボンニュートラルに向けたエネルギーと物質の高度な変換・貯蔵技術
- 一人ひとりのWell-beingを実現するセンシングと医用材料
- AIインフラを支える次世代半導体材料・デバイス技術
- 通信・情報処理を革新する量子特有の性質の活用・制御技術
- インフラの信頼性と利便性を支える材料・デバイス
- 機能性材料のフロンティア開拓
- 資源の持続的利活用を牽引する材料・プロセス
- AI 駆動マテリアル研究開発
- ものづくりの持続可能性の予見的評価と戦略的設計
本分野の研究開発の推進においては、研究環境の整備や、人材の育成・確保、さらに経済安全保障も考慮した国際戦略などが必要になる。こうした国外内の現状や課題についても述べている。
※本報告書の参考文献としてインターネット上の情報が掲載されている場合、当該情報はURLに併記された日付または本報告書の発行年月の1ヶ月前に入手しているものです。
~分野別俯瞰編~
- 分野別俯瞰編
~領域別動向編~
- N1 エネルギー・環境応用
- N2 ライフ・医療応用
- N3 ICT・エレクトロニクス応用
- N4 社会インフラ・モビリティ応用
- N5 物質と機能の設計・制御
- N6 共通基盤科学技術
- N7 社会実装へのガバナンス