多様化している現代社会のアディクション(嗜癖・嗜虐行動)への対応には、総合的な支援が不可欠。
Addiction Trans-Advocacy Network(ATA-net)の概念イメージ
“えんたく”の活用場面
背景
薬物やアルコールへの依存、家庭内での暴力や虐待、ストーカーや痴漢等の性問題行動、病的なギャンブリング、クレプトマニア(窃盗癖)、摂食障害、インターネットや携帯電話への依存等、現代社会においてアディクション(嗜癖・嗜虐行動)は多様化している。多様化するアディクションに対応するためには、事象ごとに分かれている現行の縦割り型支援を見直し、「公」と「私」が適切に連携した総合的な支援が不可欠であるが、縦割りの公的支援や、処罰への過信、責任追及による当事者の孤立、家族への責任転嫁等が障壁となり、適切な支援が提供されているとは言い難い。
研究開発のアプローチ
本プロジェクトでは、多様化するアディクションに総合的に対応するため、物質依存、暴力行動、性問題行動、ギャンブリング、クレプトマニア・摂食行動、インターネット・携帯電話依存の6つの領域を対象に、実態調査、理論研究、回復支援を実施。公的セクター(警察、検察庁、裁判所、矯正・保護施設、医療機関、福祉施設、自治体等)と私的アクター(家族、友人、地域社会、民間支援団体等)のステークホルダーがそれぞれの障壁を越えて協働し当事者の回復を総合的に支援するネットワーク(Addiction Trans-Advocacy Network:ATA-net)を構築 。その実践モデルとして、当事者の主体性を尊重し、支援者と協力者が力をあわせる“えんたく”という回復支援スキームを開発し、その担い手を育成するためのリーダー養成講座の研修を体系化した。
成果
今後の持続的な実施に向け、成城大学 治療的司法研究センター、龍谷大学 ATA-net 研究センター、一般社団法人刑事司法未来など、複数の拠点を設立。 京都府と共同で“えんたく”を実施し、再犯防止推進法による自治体での再犯防止の取組に寄与したほか、“えんたく”が フィリピン・タイ・韓国など東アジアにおける薬物依存からの回復支援研修に取り入れられるなど、研究成果の社会展開に顕著な進展が見られた 。
「安全な暮らしをつくる新しい公/私空間の構築」研究開発領域※ ※本領域における研究開発予算規模(直接経費):1プロジェクト 数百万円から 3千万円以下/年 プロジェクト実施期間:2016年10月~2022年3月 |