「科学コミュニケーションの現在と日本の課題」
2024年10月26日(土)、JST-RISTEXの主催で「科学コミュニケーションの現在と日本の課題」を開催しました。
(2024年12月24日掲載)
開催概要
開催日:2024年10月26日(土)
開催場所:日本科学未来館7階 カンファレンスルーム土星
講演会
午前中はサイエンスアゴラ2024の出展企画として講演会が行われ、イタリア・トレント大学のマッシミアーノ・ブッキ教授、フィンランド・ユヴァスキュラ大学のクリストフ・フェニベシ氏、矢田匠氏、またオンラインで東北大学の大隅典子教授が登壇しました。
ブッキ教授からは欧州における科学コミュニケーション、フェニベシ氏・矢田氏からはフィンランドにおけるSTEAM教育の取り組み、また大隅教授からは科学者の立場から見た科学コミュニケーションへの期待について、それぞれ話題提供が行われました。
会場には学生から研究者まで、科学コミュニケーションに関心のある方が集まり、科学コミュニケーションの評価やフィンランドの教育システム、科学コミュニケーションのツールについてなどの質問が上がりました。
また、セッション終了後には参加者同士の交流が盛んに行われました。
講演会の詳細なレポートはサイエンスポータルにてご覧いただけます。
関連リンク
専門家ワークショップ
同日午後には専門家ワークショップを開催しました。
今回のワークショップはイベントのタイトル通り「科学コミュニケーションの現在と日本の課題」を可視化することを目的とし、大学教員、研究機関広報担当職員、フリーランスの方など様々なバックグラウンドを持つ科学コミュニケーションの専門家31名にご参加いただきました。
最初に、5名の方からそれぞれが行う科学コミュニケーションに関する取り組みについて話題提供をいただきました。
<話題提供者>
金沢大学 人間社会研究域 地域創造学系 地域創造学類准教授 一方井 祐子 氏
北海道大学 科学技術コミュニケーション教育研究部門 (CoSTEP)部門長 奥本素子 氏
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP) 広報室 広報室長 高祖 歩美 氏
科学コミュニケーター 本田 隆行 氏
BUSINESS INSIDER JAPAN 三ツ村 崇志 氏
話題提供の様子
その後は5つのグループに分かれてそれぞれの持つ現状や課題を共有、ディスカッションを行いました。
議論の最後にはグループごとにディスカッション結果の発表を行い、意見交換を行いました。
現状と課題においては、
- 研究者の科学コミュニケーションに対する意識:業務の多忙さ、科学コミュニケーションの意義に対する認識、科学コミュニケーションの実践が研究者の評価軸に入っていない
- 理科離れ・科学に苦手意識がある人へのアプローチ:科学資源にアクセスできる環境があるとよい(都市部・地方の格差)
- 社会的なニーズはあるはずだがうまく供給できていない
- 「科学コミュニケーション」という言葉の曖昧さ
- 市民参加型研究(シチズンサイエンス)について、市民からでた意見やコメントをどう研究に反映させたらいいのか・どの程度反映させたらいいのか
- 科学コミュニケーションが語るテーマは大きい・先端すぎる?もっと身近な、消費生活センターで扱うような話題を取り扱っても良いのでは
といった意見が上がりました。
これに対しなりたい未来としては、
- 科学コミュニケーションが当たり前の社会になってほしい
- 朝のテレビ番組に出るような、メディアフレンドリーな科学コミュニケーターを売り込む
- 科学コミュニケーション・科学における多様な女性の活躍
- 教養的に科学コミュニケーションを知った上で、得た知見を生かした生きざまを選択きるようになる
- 「科学コミュニケーション」は何ができるのか
- 倫理的・法制度的・社会的課題(ELSI)や責任あるイノベーション(RRI)の視点も増えてきた。理系に限らない「科学」に縛られない人材の参入
といった意見が上がりました。
意見交換の中では、「そもそも科学コミュニケーションとは何か」といった原点的な問いも出るなど、議論が尽きることはありませんでした。
JSTは今後も科学技術・イノベーション基本計画に沿って、科学と社会の関係深化のための様々な取り組みを推進してまいります。
関連リンク
関係者記念写真