【開催報告】令和元年度 多世代領域合宿

開催日:2019年(令和元年)7月20日(土)~21日(日)
開場:クロス・ウェーブ船橋

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多世代領域は、今年最終年度を迎えます。
とはいえ研究開発から生まれた成果の社会実装が本格化するのは、いよいよこれから。領域内の成果を、どう取りまとめ引き継ぐべきか。今回の合宿で、意見交換やワークショップを通じて具体性を高めていきます。

1日目
プロジェクトからの報告を中心に
ディスカッションを開始

年に一度の合宿、今回は台風接近にスタッフ一同気をもみましたが、みなさんお忙しいところ途中参加や部分参加もありながら、予定していた14プロジェクトの研究者のかたがたが到着し、マネジメントグループも含め総勢50名程度で無事に合宿がスタートしました。

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大守総括から領域の状況と合宿の目的についての簡単な説明のあと、さっそく全プロジェクトのアウトカムの発表を行っていただきました。継続中のプロジェクトから順に、持ち時間4分の発表です。

地域の幸福指標の開発を目指す内田プロジェクトでは、地域の幸福コンソーシアム事業を構築し、まちづくりの研修や総合計画策定の中に「地域の幸福モデル」が組み込まれるようになりました。また、海外からの問い合わせも多く、国際展開も期待されています。
昨年、多世代のニーズを疑似体験できるツール「まちづくり人生ゲーム」を完成させた後藤プロジェクトでは、由緒ある町家(空き家)を活用した学生等向けシェアハウスを企画中とのこと。入居の条件として「地域活動への参加」を行うという、ユニークな試みです。
公共資産を地域全体で共創する仕組みの構築を目指す堤プロジェクトは、現在、9つの自治体を支援しています。各自治体で多彩な住民を巻き込んでの多世代共創が、公共施設再整備案の方向性を改善へと導くことが明らかになってきました。
林業と福祉を切り口に、地域の生活を下支えするコミュニティの創成を目指す家中プロジェクトでは、現地での頻繁な勉強会など活発な活動を続けています。少しずつ、仕組みづくりのヒントが見えてきているようです。

プロジェクトの半分は研究開発期間を終了していますが、さまざまな形で次のフェイズへ発展している様子が伺えて、心強い限りです。地域の子どもたちを中心とする多世代の「居場所」を運営する渡辺プロジェクトは、次の支援を獲得するとともに運営法人を設立しています。特定の地域をフィールドとしない「俯瞰・横断枠」として、地域における利他的行動への意識等が世代間で継承されていくためのメカニズムを探る要藤プロジェクトも、「終了後は特に進展がなくて......」と仰りつつ、しっかり書籍を発行されていました。

アウトカムの次は、コミュニティについての提言に移ります。現代における相互扶助の仕組みの契機は何かをテーマとしたグループディスカッションを経て、ここまでの発表で提示された多くの知見やアイデアをもとに、活発な質疑が飛び交いました。

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合宿参加の感想を伺うと、「他のプロジェクトのやりかたが、自分の研究に活かせる」「意外なヒントをもらえる」という答えを多くいただきます。たとえば島谷プロジェクトから発表された、「学術や行政の用語は、まつりや言葉などの『文化』に根ざした単語に変換されると、人の心に響くようになる」という知見には、多くのプロジェクトに思い当たるところがあった様子で、熱心にメモを取られるかたが目立ちました。休憩時間や懇親会も、格好の情報交換の場です。

2日目
領域の取りまとめと、
成果の実装に向けて

1日目の夜には夕食を兼ねての懇親会も開催され、2日目は朝から気力充実。漁場としての大阪湾を見直すことで地域文化の再生を目指す、大塚プロジェクトの発表からスタートしました。午前中は、領域活動報告書や領域のリサーチ・クエスチョンと、多世代共創のノウハウをまとめた「ハンドブック」について、午後は多世代領域の「キーワード集」について話し合い、発表と議論を繰り返します。

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研究開発拠点や代表者のご所属先が飛びぬけて多彩なのは、この領域の特徴のひとつです。代表者ご自身も、アクティブで個性的なかたが揃っているように感じます。キャラクターももちろんですが、外見から既に、一般的な「研究者」のイメージを覆すかたも。 写真左、昨年から種子島での「未来カルテ」による実装をスタートさせた倉阪プロジェクト代表は、現地でのワークショップのためか(?)、見事に日焼けしてのご登場でした。写真右、拠点の牧場で開発した「南三陸わかめ羊」がTVのグルメ番組で紹介され、その地域活性化の手法に近県から複数の問い合わせをいただいている金藤プロジェクト代表は、「正装」のジーンズ姿です。

領域は今年度で終了予定ですが、研究開発は続きます。
実施期間終了をこの秋に控えた大沼プロジェクトは、ご所属先の大学に「生業景デザイン研究所」を創設。着々と地元の地技/生業をつないでいます。関プロジェクトの視覚障がい者のナビゲーションシステムは、システム本体と市民の支援の仕組みを提案し、2020年のパラリンピックでの実証実験を目指しています。
また、もともとの研究開発拠点から遠く離れた町からお問い合わせをいただき、「飛び火」のように他地域への展開を見せているプロジェクトも複数あります。藤原プロジェクトは、新たな助成金で研究開発を継続。行政と住民双方からの働きかけで推進する多世代共助の仕組みづくりを、首都圏にて横展開中です。古川プロジェクトは、研究開発拠点で行った多世代共創型ライフスタイル創出の試みが自走・継続に至っています。そのノウハウをもとに、新たに3自治体で活動を開始しました。

領域が閉じた後、社会実装の深化のための支援については、今までもRISTEXの大きな課題でした。次年度へ成果をつなぐべく、検討は続きます。

※所属・役職は、取材当時のものです。
(文責:RISTEX広報 公開日:令和元年8月27日)

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