【プロジェクト訪問】シンポジウム『子ども虐待リスクのある家庭をどのように評価・支援するか?』

開催日:2018年(平成30年)10月8日(月・祝)
会場:首都大学東京秋葉原サテライトキャンパス(東京都千代田区)

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受付の隣に置かれた大きなホワイトボードでは、ホームページ『こそだてタイヘン.com』を紹介していました。
会場中央のテーブルには、開発中のアプリを体験できるタブレットが並んでいます。

全国の児童相談所が平成29年度中に児童虐待相談として対応した件数は約134,00件で、右肩あがりの増加を続けています。森田プロジェクトが手掛けているのは、対応する児童相談所や自治体の職員等の支援者をサポートする仕組みづくりです。その中核である支援アプリは、全国の児童相談所と一時保護所の調査データをもとに、ケースごとに虐待のリスク評価を行い、支援者の判断を手助けします。

プログラム

第1部

虐待予防のためのアプリ・サイトの紹介とその使い方 発表者:森田展彰氏(研究開発代表者・筑波大学)、川口由起子氏(植草学園大学)、種田綾乃氏(筑波大学)、大宮宗一郎氏(筑波大学)、田中恵次氏(株式会社 要)、大谷保和氏(筑波大学)

第2部

「困っている家族とコミュニティの間をつなぐ対話的実践」斎藤環氏、(筑波大学) 「精神的な問題などで困っている親子を支援するには」ぷるすあるは 、「依存症の家族、特にそこに育つ子どもの支援」田中紀子氏、(ギャンブル依存症を考える会)

全国調査データベースをもとに、虐待リスクを表示
養育者のメンタル面をサポートするサイト

森田プロジェクトでは、全国の児童相談所と一時保護所の調査データを解析し、その解析データ等をもとに虐待のリスクを提示するアプリを開発しています。画面上のチェックボックスにチェックを入れることで各ケースの情報を入力すると、虐待の重傷であるかどうか、一時保護が必要か、再通告されるか、不適切な養育を行っているか、リスク予測を行うことができます。
アプリの仕組みを解説した後、さっそく具体的な使い方を示すためロールプレイが行われました。支援者が得た情報をもとにアプリを入力していきますが、最後に「配偶者からのDVがある」の項目を追加しただだけで虐待リスクが跳ね上がった瞬間、会場のそこここから溜息が聞こえました。
プロジェクト終了後も新たな調査等を継続的に行いながら、アプリの精度を高めていく予定です。また、希望者にアプリを入れたタブレットを無料貸与し、ご意見等をフィードバックしていただきます。

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森田代表(左)のご挨拶では、「一筋縄ではいかなかった......」と苦労の垣間見える一言が。ロールプレイは、子どもへの虐待が疑われる家庭への訪問の場面と、複数の支援者が集まってケース会議を開いた際にアプリ使用を提案する場面です。会場からは、「ロールプレイの様子から予想していたより、アプリの判定がずっと深刻だった」という感想が聞かれました。中休みのアプリ体験コーナーの盛況ぶりが、ニーズの高さを物語るようです。

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アプリは支援者に向けて作られていますが、ホームページ『こそだてタイヘン.com』では、養育者自身が直接情報を得ることができます。「子育てが大変、つらい、パートナーなど周囲のことも含めて迷ったり困ったりしている」といったときに、単に「安心する」のではなく、エビデンスベースドで具体的な回答や解決方法などを見つけることができるサイトです。養育者本人だけでなく、支援者や研究者のかた向けのコンテンツも充実しています。

アプリによる対応を補う「対話型」の手法を紹介
実装に向けて、研修会等も開催予定

後半の第2部では、アプリを用いたアプローチだけでは対処しきれない面を補う、「対話をもとにした」アプローチが紹介されました。
斎藤氏からは、統合失調症のケア技法「オープンダイアローグ」についてご解説いただきました。薬物等を使わずに高い効果を上げることが可能な技法ですが、最近は児童福祉の場でも注目を集めています。
ぷるすあるはの書籍紹介では、絵本『お母さんどうしちゃったの・・・: ―統合失調症になったの・前編―』の文章を関西弁で読み上げていただきました。「家族のこころの病気を子どもに伝える絵本」シリーズ4冊のうちの1冊です。
田中氏からは、依存症家族の具体的な事例が紹介されました。当事者となった家族の、「自分たちは、対応策を尋ねるべき場所などの情報を、たまたま知っていて救われた。知らないひとはどうすればいいのだろう?」という言葉が、リアルで切実です。

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シンポジウムの資料には、ご意見やご質問をいただくための付箋が添えられていました。貴重なフィードバックを、ありがとうございます!

アプリ入りタブレットの貸し出しだけでなく、研修会も続けて開催予定です。予定は『こそだてタイヘン.com』「支援者の方へ」のページ等で告知しています。援助者であればどなたでも参加可能です。ぜひお声がけください。

※所属・役職は、取材当時のものです。
(文責:RISTEX広報 公開日:平成31年1月25日)

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