平成22年度社会技術研究開発事業における新規研究開発プログラムの設定及びプログラム総括の選定について
社会技術研究開発センターでは、文部科学省 科学技術・学術政策局による、「サービスに新たな可能性を求めて-サービスイノベーションのための提言-」を受け、新しい事業設計を進めることとし、 有識者へのインタビューやアイデア募集、ワークショップ等を行い、事業の具体化に向けた検討を行ってまいりました。
これらの検討の総まとめとして、平成22年3月19日に、JST社会技術研究開発センターにて公開フォーラムを開催し、幅広い一般の方々との意見交換を行いました。
JSTでは、これらの検討結果をもって、外部有識者による社会技術研究開発センター運営協議会(名簿:別表)(平成22年4月5日)を開催し、その審議を経て、下記の通り新規研究開発プログラムを設定し、プログラムの運営責任者であるプログラム総括を選定しました。
- 研究開発プログラムの名称:
「問題解決型サービス科学研究開発プログラム」 - プログラム総括:
土居 範久(中央大学研究開発機構 教授)
1.研究開発プログラムの内容
(1)本プログラムでは、以下の4点を達成することを目標とします。
- 問題解決に有効な技術・方法論等の開発
- サービス科学の研究基盤構築
- 研究成果を様々なサービスに活用し、個々の問題を解決することによる社会貢献
- サービス科学の研究者・実践者コミュニティ形成への貢献
目標1.2.3.を達成するために、本プログラムではA.問題解決型研究とB.横断(俯瞰)型研究の2種類の研究アプローチを設定します。 Aでは、社会に おける具体的なサービスを対象に、その質・効率の向上と新しい価値の創出・拡大のために、問題解決に有効な技術・方法論等を開発し、 それを実際に様々な サービスに活用して問題を解決します。また、研究開発により得られた技術・方法論等がサービス科学の研究基盤の構築に貢献することを目指します。 Bでは、 サービス科学の研究エレメント(横断的要素)に焦点を当て、新たな知見を抽出し積み上げていくことでサービス科学の概念・理論・技術・方法論を創出し、 将来的に様々な分野のサービスで応用可能な研究基盤を構築することを目指します。目標4.に関して、研究開発推進を通して、またはサービス科学の研究者・ 実践者が協働する場を設定することで、未だ存在しないサービス科学のコミュニティ形成に貢献することを目指します。
(2) 1.~4.の目標を達成するために、プログラム総括を中心とするプログラムマネジメント側が綿密にプロジェクトのマネジメントを行います。 ただし、本プログラムには年限がないため、5年毎を目処とする定期的な評価を行うことによって、目標の達成度を測ることとします。 (3)プログラムの目標は、各プロジェクトの成果の総和によって達成されるものです。そのため、プロジェクトの提案者にも、目標や解決すべき問題の設定、 それらを達成するための研究アプローチ等についての具体的な提案を求めます。
2.プログラム総括について
土居氏は、「問題解決型サービス科学研究開発プログラム」のフィージビリティスタディの中心人物として、プログラムのコンセプトづくり・制度設計のために、ワークショップやワーキンググループにおいて多様な専門分野の研究者・実践者による議論をとりまとめられました。
「サービス科学」研究は、分野融合型の研究アプローチであり、これに係わる学問分野は情報工学や統計数理学といった自然科学系分野から、 経営学や社会 学、文化人類学など人文・社会科学系分野まで、非常に幅広いものです。土居氏は、高い先見性と洞察性をもって、 多様な専門分野の研究者・実践者の参画を 得、本プログラムの「サービス科学」の定義・概念の設定や制度設計をリードされてきました。 同氏はご自身の専門分野のみならず、他分野に対しても広い視野 を持たれており、まだ新興の段階にある「サービス科学」全体を俯瞰しつつ、 統一された定義・概念がない中で複雑な議論から本質を見出し、今後我が国にとっ て、どの様な研究開発が必要かを鑑みながら、全体の議論をとりまとめられました。
また、土居氏は、平成15年度~現在に至るまで、社会技術研究開発事業の「情報と社会」研究開発領域を統括する領域総括を務めてこられました。 この領域は、情報システムに関連する社会的リスクを解明し、それを最小化すること目的としたものです。
土居氏は、同領域・計画型研究「高度情報化社会の脆弱性の解明と解決」(平成15年度~19年度までの5年間)において、 自然科学分野及び人文・社会科 学分野の多数の研究者から成る研究チームをマネジメントし、高度情報社会における情報システム全般の脆弱性を俯瞰するハザードマップや、 利害対立者間での コミュニケーションを評価および支援する多重リスクコミュニケータの開発、デジタルコンテンツの利用環境に係わる提言策定など、 研究成果の社会実装を含め 多くの実績を上げてこられました。
また、同領域・公募型研究の研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」(平成17年度~現在)においても、 ユビキタス社会の情報セキュリティ確保やプライバシー保護といった課題を解決するための研究開発プロジェクトの選考やマネジメントに務めてこられました。
以上のように、土居氏は、サービス科学に関する先見性や洞察性をお持ちであり、問題解決型・分野融合型の研究のマネジメント経験も豊富であり、 高いマネ ジメント能力を発揮して実績を上げてこられています。また、社会技術研究開発事業や本事業の研究マネジメント手法にも精通していらっしゃいます。
別表:社会技術研究開発センター運営協議会 協議員
(敬称略、順不同 平成22年4月現在)
氏名 | 所属・役職 | |
---|---|---|
議長 | 加藤 康宏 | (独)海洋研究開発機構 理事長 |
議長代理 | 鳥井 弘之 | NPO法人テクノ未来塾 理事長 |
協議員 | 阿部 博之 | 東北大学 名誉教授 |
大石 久和 | (財)国土技術研究センター 理事長 | |
大垣 眞一郎 | (独)国立環境研究所 理事長 | |
大熊 健司 | (独)理化学研究所 横浜研究所 所長 | |
沖村 憲樹 | (独)科学技術振興機構 顧問 | |
黒川 清 | 政策研究大学院大学 教授 | |
黒田 昌裕 | 東北公益文科大学 学長 | |
黒田 玲子 | 東京大学大学院 教授 | |
桑原 洋 | 日立マクセル株式会社 相談役 | |
小出 五郎 | 日本科学技術ジャーナリスト会議 理事 | |
清水 肇子 | (財)さわやか福祉財団 常務理事 | |
鈴村 興太郎 | 日本学術会議 副会長 | |
遠山 敦子 | (財)新国立劇場運営財団 理事長 | |
森田 朗 | 東京大学公共政策大学院 教授 | |
鷲田 清一 | 大阪大学 総長 |