【終了】「情報と社会」研究開発領域について

「情報と社会」研究開発領域は、平成22年度に活動を終了しました。
領域は①情報技術の展開および多様化がもたらす社会への影響を調査し、想定しうる社会的リスクを最小化するための情報システム・セキュリティに関する基礎的事項を提示することをミッションとした計画型研究開発「高度情報社会の脆弱性の解明と解決」(平成15~19年度)と、② 「ユビキタス社会」で必要とされる「ガバナンス」はいかにあるべきかを主題とした研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」(平成17~22年度、全5プロジェクト)を実施しました。
計画型研究開発「高度情報社会の脆弱性の解明と解決」の社会技術システム時代の名称は「ミッション・プログラムⅡ」。

領域総括

土居 範久

慶應義塾大学 名誉教授

近年の情報技術の進展は目覚しく、情報システムが社会におけるあらゆる重要な機能に取り入れられています。それによる利便性は急速に高まりつつある反面、情報システムに事故が生じた際の社会に及ぼす被害の大きさは計り知れないものとなります。このような社会的リスクの最小化を目的として研究開発を推進します。

今後広く社会に展開すると考えられる情報技術のユビキタス化によってもたらされる「ユビキタス社会」の特徴として、社会構造やその基盤の変化が激しく、それを支える技術については研究開発と最先端技術が短期間で社会に導入され、実証と実用が混在して展開することが予想されます。このような環境ではそのガバナンスのあり方について長期的な視座で策定することは困難です。そこで、衆知を集約した課題設定により技術の進展に動的に対応しつつ遂行可能なガバナンスのあり方について、研究開発プログラムを推進することとします。

また、既に社会の重要インフラ等に適用されている情報システムに関し、想定される脆弱性の解明と解決に係る研究を計画型研究開発にて推進します。具体的には、情報技術の展開および多様化がもたらす社会への影響を調査し、想定しうる社会的リスクを最小化するための情報システム・セキュリティに関する基礎的事項を提示します。

領域の目標

情報システムに関連する社会的リスクを解明するとともに、その最小化を目的として以下の研究を推進しました。

研究開発プログラムでは、今後広く社会に展開すると考えられる情報技術のユビキタス化に関し、「ユビキタス社会」の「ガバナンス」に係る研究を推進し、法制度、ガイドライン、実装方策等の提案を行いました。

計画型研究開発では、既に社会の重要インフラ等に適用されている情報システムに関し、想定される脆弱性の解明と解決に係る研究を推進し、リスク対策等の提言を行いました。

領域の構成

本領域は以下の構成で研究開発活動を推進しました。

* 社会技術システム時代の名称はミッション・プログラムII

公募型研究開発「ユビキタス社会のガバナンス」(平成22年度終了)

研究開発テーマの概要

「ユビキタス社会」の到来によって、より創造的で生産的な社会が実現され私達の生活と社会経済活動の一段の発展が期待されるとともに、情報セキュリティの確保やプライバシーの保護などの重要性が問われています。すなわち利便性を優先することに起因する社会的な脆弱性が心配されます。「ユビキタス社会」の特徴として、「ユビキタス社会」を支える技術について、研究開発と社会展開がオーバーラップすることから、最先端の技術が短期的に社会に次々と導入され、実証と実用が混在しながら展開することが予想されます。このような特徴により、従来の社会制度との整合性が十分に行われていないことや、あるいは、科学技術の発展に社会科学や法制度が追従し切れていないことが問題として露呈してきているといえます。

そこで、「情報と社会」研究開発領域では「ユビキタス社会」で必要とされる「ガバナンス」はいかにあるべきかを主題として取り上げ、予測される悪や悲劇の芽を摘み取るため、あるいは予測されるよい点をよりよく進展させるための手段について研究します。その際、科学技術だけでなく人文・社会科学などの知見も統合した俯瞰的な視点をもって問題解決のための研究を行いました。

なお、「ユビキタス社会」としては、「コンピューター利用のユビキタス」の視点に限定されることなく、人類の持つ情報のすべてが情報システムの上にユビキタスに拡散する状況、情報システムが人をユビキタスに同定する状況、情報システムが実世界とがユビキタスに結合する状況を含めて、考え得るすべてがユビキタスになった社会を想定することとします。

本研究開発プログラムでは、まず課題の実行可能性に係る調査研究(フィージビリティ・スタディ)を行い、その結果をふまえて、次年度から本格的な課題を設定して研究開発を推進します。

研究開発プロジェクト

平成19年度採択課題

平成18年度採択課題

平成17年度採択課題

計画型研究開発「高度情報社会の脆弱性の解明と解決」(平成19年度終了)

研究の概要

情報技術の展開および多様化がもたらす社会への影響を調査し、想定しうる社会的リスクを最小化するための情報システム・セキュリティに関する基礎的事項を提示することをミッションとします。

具体的には、以下の成果を想定しています。

  • 高度情報社会の持つ脆弱性を明らかにするためのリスク評価を実施し、多種多様な脆弱性を俯瞰するための「ハザードマップ」を作成します。その際、脆弱性解決にかかる手順・コストを明らかにすることを目的としたシミュレーションを実施します。
  • 明らかになった脆弱性を解決するための、法制度、社会制度、技術開発、普及・啓発、教育といった多様な切り口からのアプローチを行い、より実効性の高い解決方法を提示します。
  • 高度情報社会の持つ脆弱性について、政策立案者が包括的理解を得るための基礎的な資料を提示します。
  • 今後の情報システム・セキュリティ分野における新たな研究展開についての見通しを得ます。

研究内容

  1. 高度情報社会における情報システム全般の脆弱性を俯瞰するハザードマップの策定
    情報システム・セキュリティを対象とした実用的なコストモデルの構築と適用
  2. 高度情報社会における様々なリスクの解決に際し、利害対立者間でのコミュニケーションを評価および支援する多重リスクコミュニケータの作成
  3. 暗号利用の様々なリスクを調査分析をすることによる、暗号利用システムの脆弱性の提示
  4. 高度情報社会におけるデジタルコンテンツの円滑な流通に際し、DRM(Digital Rights Management)の法的・政策的・技術的課題の調査を介した、今後のDRMの利用環境に係わる提言策定
  5. 非常時における情報通信システムの果たすべき役割の社会的側面から検討することによる、技術的、法的、制度的提言策定

研究課題

情報システム全般の脆弱性を俯瞰するハザードマップとコストモデルの構築

ハザードマップとは、情報システムの脆弱性とそれが社会に及ぼす影響を俯瞰するためのツールです。社会的なインシデント(大規模自然災害、テロリ ズムなど)が発生し、それらが情報システムに及ぼす被害をシミュレーションすることにより、社会に及ぼす影響を分析可能とするツールの開発を目指しています。

コストモデルとは、ハザードマップの作成に際して被害と対策の関係をコストの視点からモデル化するもので、社会としての被害額と対策額の関係を明 らかにすることを目指しています。国や企業、個人等の各レベルで係るコスト(費用)を対象とし、直接的な被害額や復旧コストのみならず、業務レベルでの逸 失利益(業務停止により失われる利益)を含め包括的に被害額を明らかにします。

情報セキュリティに係る法律的/政策的事項に関する課題の検討と提言にむけて

急速に情報システムが進展する環境においては、的確かつ継続的に情報セキュリティに係る法律や政策を整備していくことが肝要です。

本研究では、情報セキュリティに関わる政策や法律を俯瞰的に眺めることにより現在の動向や課題を明らかにし、今後の政策立案に貢献する提言を行うことを目標とします。

法律については、国内の情報システム関連の各種法律の規定状況と適用状況、昨今のフィッシングやスパイウエア等の問題に対する国内外の対応状況等を調査・整理し、論点を明らかにし、あるべき姿を明らかにします。

政策については、国内における全体的枠組みならびに各省庁における情報セキュリティに対する取組み、推進体制を調査・分析し、主要な問題に対する提言事項をまとめます。

研究グループ

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