研究開発の推進方法

Ⅰ. 社会における取り上げるべき具体的問題の探索・抽出

 社会に役立つ社会技術を研究開発するために、RISTEXでは社会の重要な問題をテーマとする「研究開発領域・プログラム」を設定します。新たな研究開発領域・プログラムは約1年間にわたる準備・検討を経て誕生します。
 まず、予備調査で社会の問題として捉えられる多種多様な事象を抽出し、その後さまざまな分野の専門家を招き、問題を俯瞰的に把握するためのワークショップを開催します。“近々顕在化が予想される社会問題”、“テーマとすべき社会問題”、“社会問題の解決アプローチ”などについて議論し、特に重要と考えられる問題を候補として絞りこみます。さらにテーマ別にワークショップを行い、重要性や緊急性について議論を深め、解決に向けて取り組むべき社会問題を決定します。

社会問題のテーマ設定プロット図

Ⅱ. 研究開発領域・プログラムの設定

 取り組むべき社会問題が決定したら、その問題に現在深く関わっている「関与者」にインタビューを行います。研究機関、企業、NPO、自治体、マスコミなど、専門の異なるさまざまな立場の方からご意見をいただき、現時点での問題だけではなく、まだ顕在化はしていない問題についても検討していきます。
 その後、インタビューの内容と一般の方からいただいたご意見・ご提案をもとに、有識者・関与者によるワークショップやワーキンググループで領域・プログラムの枠組みや研究開発アプローチなどについて検討を重ね、その概要について一般の方を対象とする『公開フォーラム』を開催し、広く意見交換を行います。
 この一連の流れから作り上げられた研究開発領域・プログラムの構想は、国等の政策を踏まえつつ、社会技術研究開発主監会議での審議を経て領域・プログラムとして誕生します。

Ⅲ. 研究開発の推進

■ 運営体制

 研究開発領域・プログラムでは、「総括」が運営の責任者として選任されます。また総括に専門的助言を行う「アドバイザー」を産・学・官・民、各セクターから選びます。
 「総括」の強力なリーダーシップのもと、「アドバイザー」とRISTEXスタッフがそれぞれ専門的役割を果たしながら、運営マネジメントにあたります。

研究開発の実施体制(研究開発領域の例)

研究開発の実施体制

■ 研究開発プロジェクトの募集・採択

 それぞれの研究開発領域・プログラムは、目的に沿った研究開発提案を募集します。多数の提案の中から、総括がアドバイザーの協力を得て選考を行い、複数の「研究開発プロジェクト」を選定します。
 研究開発プロジェクトは、研究開発領域・プログラムの目標を達成するための成果の創出を前提に、原則として3年間(最長5年間)研究開発を実施します。

研究開発プロジェクトの実施パターン(6年間の研究開発領域の例)

研究開発プロジェクトの実施パターン(6年間の研究開発領域の例)
※「プロジェクト企画調査」は次年度以降の研究開発プロジェクト応募を検討している提案に、構想を具体化し、有効な提案とするための調査検討を行っていただくものです。期間はおよそ半年間です。

■ 研究開発プロジェクトの推進

 研究開発プロジェクトの採択後は、総括、アドバイザー、RISTEX スタッフが研究開発プロジェクトの進捗からアウトリーチ活動まで、さまざまなサポートを行います。研究開発プロジェクトを推進する活動の詳細は、「研究開発領域・プログラムの運営」で詳しくご紹介します。

■ 研究開発領域・プログラムの評価

 RISTEXでは、研究開発運営および事業運営の改善に資することを目的として、領域・プログラムの目標の達成状況や研究開発マネジメントの状況、研究開発プロジェクトの活動について、外部の有識者による評価を行い、結果を公表しています。
 研究開発領域・プログラムの実施期間中に、研究開発目標の達成に向けたマネジメントの状況を把握し、運営や支援体制の改善に資するために「中間評価」を行います。研究開発終了後には、研究開発の実施状況、研究開発成果、波及効果等を明らかにし、今後の成果の展開やRISTEXの事業運営の改善に資するために「事後評価」を行います。また、研究開発終了後一定期間を経過した後に、研究開発成果の発展状況や活用状況、波及効果等についての「追跡調査」を行います。

Ⅳ. プロトタイプの提示

 プロジェクトの研究開発活動(図の第1層)の成果は、社会実験を行った地域やコミュニティだけではなく、さまざまな組織や地域に広がり活用されることが期待されています。
 そこで個々の研究開発プロジェクトには、そのためのモデルや方法論、地域特性や制約などの適用条件、担い手の育成・確保などを具体的に示したプロトタイプの提示が求められ、これが多様なネットワークを通じて社会実装に展開していくことになります。
 領域・プログラム(図の第2層)のレベルでは、複数のプロジェクトの成果や共通課題を俯瞰しながら、より規範性・普遍性を高めた統合モデルや方法論の構築を図り、法制度や政策など国や自治体の公共的なシステム(図の第3層)の改革を目指した提言等へとつなげて行きます。

プロトタイプ展開の概念図

プロトタイプ展開の概念図

Ⅴ. プロトタイプの実装支援

 RISTEX では研究開発領域・プログラムの中で、研究開発の成果が国・自治体・企業・NPOなどの組織の活動や事業として活用され、さまざまな地域・コミュニティに広がり、将来的に「社会技術」として普及・定着につながるよう支援を行っています。

社会技術研究開発と社会実装との関係

社会技術研究開発と社会実装との関係

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