「循環型社会」採択プロジェクト

平成16年度採択

付加価値を基礎とした環境効率指標の提案とその活用

稲葉 敦((独)産業技術総合研究所 ライフサイクルアセスメント研究センター センター長)

先進的企業が企業活動や製品の環境効率を提示するようになってきましたが、その指標は各社各様であり、製品と企業の環境効率の関係、企業と産業、並びに国の環境効率との関係が明らかではありません。そのため、本研究では、既に開発されている日本版被害算定型環境影響評価手法を用いて統合化した環境負荷を分母にし、付加価値を分子にした環境効率指標を提案し、その活用方法を提示します。付加価値を分子にすることで、国全体、産業、企業、製品の各レベルでの環境効率を関連づけることが可能となり、また、統合化した環境負荷を使用することで、製品、企業、産業それぞれの環境に対する特質を明確にすることができます。

本研究の成果は、企業の環境戦略・製品開発戦略等へ波及し、これにより企業の情報開示が飛躍的に進み、循環型社会の形成に大きく貢献することが期待できます。

サスティナブル・ユビキタス社会実現のための要素技術に関する研究

高岡 美佳(立教大学 経営学部 准教授)

ユビキタスコンピュータ社会が到来しつつある現在、ユビキタスサービスによって,産業活動の大幅な生産性向上が見込まれるとともに,消費者の生活の質そのものの飛躍的向上も期待されます。ただし,そのことは,循環型社会の促進に直結するわけではありません。

本研究は,消費者行動の観点を導入し,消費者のユビキタス技術・サービスに対する評価と各利用シーンの代替可能性を測定する一方で,いくつかの利用シーンを想定して環境効率あるいは安心効率を算出することを通じ,環境改善効果の高い生活行動ナビゲーションシステムの開発及び実証実験を行います。また,循環型社会の促進にユビキタス技術・サービスが貢献しうるシナリオを示すものであるとともに,サスティナブルなユビキタス社会の創出に取り組む行政に対して政策提言を行うものです。

ボーダーレスサプライチェーンでの逆流通システムの研究

林 秀臣(特定非営利活動法人 エコデザイン推進機構 理事)

グローバルな循環型生産システムを構築し電子産業の環境適応性を高めると同時にビジネスを創成する事を目指します。具体的には、環境規制と循環系の機能配置のデータベースを構築します。また、接合技術の総合評価、LCAツールの評価、更に、グローバルなサプライチェーンに適用した場合、経済的に自律出来る逆流通システムを構築する為の指針を明らかにします。本研究により、ビジネス上の課題が明らかになる事で電子産業の環境調和に向けた技術開発が加速されることが期待されます。

平成15年度採択

既存都市・近郊自然の循環型再生大阪モデル

池上 俊郎(特定非営利活動法人 エコデザインネットワーク 副理事長)

本研究は既存都市の循環型再生モデルを大阪市内密集市街地、大阪湾湾岸未利用地を対象に、"構想、技術、美学を統合するデザイン"重視の"エコデザイン"の視点に立脚し、数値化される量的検証に加え"デザインの力"により、社会的・文化的な定性的評価を行います。すなわち、ライフスタイル、ビジネススタイルの変革を環境負荷軽減とともに実現する研究プロジェクトです。

LCCO2現状比30%削減の達成を補完し、大阪地区の産業再生の方策を示し、普遍性をもった循環型都市再生アジアモデルの構築を目指します。

サステナビリティ指標としての物質・材料フロー

長坂 徹也(東北大学 大学院 環境科学研究科 教授)

本研究はマテリアルフロー分析(MFA)、サブスタンス・フロー分析(SFA)、廃棄物産業連関分析の手法を用いて、鉄、銅等のベース物質、及び鉛等の拡散性随伴有害物質の東アジア圏におけるフローを調査、定量化し、これらデータを時間・空間軸から統合評価・分析することが可能な数理モデルを開発することを目的とします。

最終的に、循環型社会の構築に不可欠な、資源生産性、循環率、廃棄物量に次ぐ4番目の動的ストック量を表す指標を提案します。

いわて発循環型流域経済圏の構築に関する研究

両角 和夫(東北大学 大学院 農学研究科 教授)

持続可能な社会に変革するためには、環境負荷低減を可能にする物質循環に加え、新たな地域産業の創出やコミュニティ再生などの総合的な取り組みが求められます。本研究では、分水嶺から沿岸までを一つの流域経済圏として捉え、岩手県の市町村をフィールドに実践している産官学連携による地域発意と相互支援の社会システム構築を目指す取り組みをベースに、今後全国の地方自治体の参考となる循環型社会形成のモデルを提案します。

平成14年度採択

都市・地域構造に適合した資源循環型社会システムの構築

梅澤 修(横浜国立大学 大学院 工学研究院 助教授)

廃自動車に代表されるスクラップ再資源化では、生活環境保全のためのスクラップ高度利用やマテリアルフロー(地域性)をも視野に入れる必要があります。

本研究では、スクラップ再資源化の鍵を握る技術的側面に立ち、混合廃棄物(シュレッダーダスト)の分別システム、混合プラスチックの資源化、水素エネルギー(次世代自動車)機能素材の再活性化、アルミニウム二次合金の高度利用技術、といったプロトタイプ研究を行い、地域社会を考慮する資源循環型システムのモデルについて検討します。今後の循環型社会への転換に際してのビジネスモデル提案につながることが期待されます。

循環型社会における問題物質群の環境対応処理技術と社会的解決

前田 正史(東京大学 生産技術研究所 教授)

本研究では、問題物質群の環境対応処理技術に焦点を絞り、高度な循環型社会を構築するための新たな指針を提案するとともに、技術的な解決法だけでなく、社会的な解決法により、環境的かつ経済的に持続可能な循環型社会の構築を目指した知見を提供します。

具体的には、さまざまな問題物質の発生・循環のメカニズムの解析を行い、最適化処理の可能性を探索します。また、問題物質の利用技術の洗練化あるいは他の物質による問題物質の代替化という観点から、社会学的な比較研究を行い、環境的かつ経済的に持続可能な循環型社会の構築を目指したイノベーション戦略の新たな知見を提供します。

市民参加による循環型社会の創生に関する研究

柳下 正治(上智大学 大学院 地球環境学研究科 教授)

本研究では、利害の錯綜や意見の多様化が見られる課題等に関し、その政策策定や実施、さらに評価の過程に、多様な主体の積極的参加と社会的合意形成を行うために取られている手法を、わが国の環境政策に取り入れ、市民の積極的参加に支えられた社会的合意形成手法の開発を行います。

具体的には、廃棄物政策の転換により発生量や埋立量の激減等の経験を持つ名古屋市を取り上げ、研究者と市民・地域のアクターとの協働の研究・取組体制を構築し、この体制を活用して研究者による定量的な分析と継続的な市民との対話等を融合させ、名古屋市の廃棄物政策の評価を行い、目指すべき循環型社会の実現シナリオを検討します。

平成13年度採択

都市と農村の連携を通じた有機物循環システムの再生

植田 和弘(京都大学 大学院 経済学研究科 教授)

循環型社会への変革を進めるためには、経済や産業構造、技術体系のあり方をも視野に入れた社会システムとしての総合的な解析が不可欠です。

本研究では、有機物循環を経済的・社会的・技術的な側面から検討し、都市と農村の連携による循環型社会への転換を探ります。また、モデルケースとして、自治体と企業の連携により実フィールドへの適用を試みます。これらの研究を通じて、循環型社会への転換のための手段とその可能性が提示されることが期待されます。

マテリアルリース社会システム構築のための総合研究

原田 幸明((独)物質・材料研究機構 エコマテリアル研究センター センター長)

本研究は、資源の生産性向上を図ることを目的として、経済、社会システム、技術の諸側面から、マテリアルリース社会システムを構築し、システムの社会的有効性、実現に向けての時間座標と技術的、政策的、意識改革的課題を明らかにするものです。

本研究で構築するマテリアルリース社会システムとは、必ずしも明示的なマテリアルリースの形態をとる必要はなく、素材・物質の生産者が、最終管理責任の所在を経済行為の中に含んで素材・物質を提供するシステムです。このシステムにより、従来行われてきたカスケード型の産業内物質循環ではなく、21世紀型の資源生産性の高い物質循環システムを可能とすることが期待できます。

環境格付け指標、格付け手法、情報公開方法の開発

福島 哲郎((株)日本環境認証機構 顧問)

サステナブルな社会を、規制によらず、市場メカニズムによって実現するためには、公平かつ信頼に足る環境価値情報を市民と企業が共有し、これに基づいて環境保全に積極的に取り組む社会を構築することが求められています。

本研究では、環境経営学会の協力を得て、環境経営格付機構との共同研究により、循環型社会の具体的なイメージを明らかにし、それに向けて企業や市民の行動を促すような環境格付け手法を開発すると共に、評価を社会に適用するためのしくみについても研究を行います。

日本社会の実情に即した環境格付け情報を世界に発信することにより、わが国の市民社会を啓発できるのみならず、日本及び日本企業が外国から信頼され、今後のビジネス活動が円滑化されることが期待されます。

  • 記載内容は研究実施当時のものであり、その後の進捗や他の研究により導出される結論が変わることもあります。
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