- 情報・システム
コグニティブセキュリティー研究動向
エグゼクティブサマリー
本報告書は、2024年1月15日に開催した俯瞰ワークショップ「コグニティブセキュリティー研究動向」の内容をまとめたものである。
個人や組織を狙ったフィッシングによる被害は年々増加している。また、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS:Social Networking Service)の普及により、誰もが簡単に情報を発信できるようになった一方で、ウクライナ侵攻ではSNSを利用して世論が操作されるなど、人や社会に対する情報攻撃が社会的な問題となっている。最近では、生成AIにより偽情報の作成が容易になるなど、AI技術の発展と利活用の拡大が新たな脅威なりつつある。コグニティブセキュリティーとは、認知を意味するコグニティブとセキュリティーを合わせた単語であり、人間の認知や行動、意思決定に悪影響を与える情報攻撃から人と社会を守ることである。科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)では、「研究開発の俯瞰報告書 システム・情報科学技術分野(2023 年)」でコグニティブセキュリティーを今後取り組むべき重要な研究領域として位置づけている。
本ワークショップでは、人と社会をさまざまな情報攻撃から守る基盤となるコグニティブセキュリティーを対象として、研究の潮流と注目動向、認知科学・心理学から見た課題、偽情報・誤情報の拡散から見た課題、AIから見た課題、将来展望について、5名の有識者から話題提供をいただき、その後、3 名のディスカッサントにも参加いただき、注目すべき研究動向や重要な研究開発課題について議論した。話題提供や議論を通して、コグニティブセキュリティー研究に関するCRDSの問題意識や研究開発の必要性を確認し、以下の示唆を得ることができた。
〈ワークショップで得られた示唆〉
- 分野をまたぐ領域であり、まず、問題点、研究課題を俯瞰することが必要である。
- 文化的・社会的背景に依存する研究領域であり、日本として研究に取り組むことが必要である。
- 心理学の研究者を含めた学際的研究の推進と、研究者層の拡充が必要である。
- 研究開発、社会実験、社会実装を推進するための高信頼のデータ基盤の構築が必要である。
- 現在の問題だけでなく、将来を予想して取り組むことも必要である。
JST CRDSは、科学技術に求められる社会的・経済的なニーズを踏まえて、国として重点的に推進すべき研究領域や課題、その推進⽅策に関する提言を⾏っている。本ワークショップで得られたコグニティブセキュリティーに関する研究動向、研究課題などを、調査・提言活動に反映していく。
※本文記載のURLは2024年2月時点のものです(特記ある場合を除く)。