海外調査報告書
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科学技術・イノベーション動向報告 台湾編

エグゼクティブサマリー

台湾は他の先進諸国に比べCOVID-19による経済、社会への影響が軽微で、台湾積体電路製造(TSMC)に代表される半導体産業、そして周辺のエレクトロニクス産業の発展もあって高い経済成長を維持し、1人あたりのGDPでは日本と肩を並べるに至っている。

技術および研究開発においても、半導体など企業部門における応用研究、開発を中心に研究開発費の伸びは著しい。ただ、その一方で、基礎研究費の比率が政府の目標に達していないほか、研究人材の伸びは研究開発費の伸びに比べ低くなっている。

基礎研究の強化に関しては、企業部門が負担する大学の研究開発費が年々増加するなど、産学連携が進みつつある。また、台湾の政府は、台湾が抱える社会課題や国際情勢等など現状の課題を認識した上で、将来に向けた科学技術発展の方策として、科学技術人材の育成と海外技術協力を推進している。科学技術の人材育成では主要国立大学に企業からの支援を得て「重点科学技術研究学院」を設立するなど産学官が強固に連携した高度科学技術人材の育成を進めている。海外技術協力では、優位性のある産業や科学技術を前面に押し立てた科学技術外交を積極的に進めている。

現在の日本と台湾の関係は、産業界、学術界とも数多くの繋がりはあるが、個別の関係構築が主となっている。ただし、台湾が日本の統治下にあった頃より、多くの日本の技術者、研究者が台湾の人々と協力して台湾の産業、教育、医療、交通など経済・社会発展の基盤を築き上げてきた。このことは現在の台湾の若者世代にも語り継がれており、アニメなどサブカルチャーの交流を含めて日本に親和性を持っている台湾の人々も多く、日本と台湾の間で科学技術交流、人材交流を進める糸口は多くある。

日本と同じように海に囲まれている台湾は、天然資源にも恵まれておらず、少子高齢化、都市部への人口集中、環境・エネルギー、気候変動、地震・台風への備えなど日本と共通する社会課題を多く抱え、科学技術とイノベーションでその解決を図ろうとしている。このような科学技術・イノベーションに関わる政策や動向は、日本の科学技術・イノベーションの将来を考える上でも参考になる。加えて、日本と台湾の両者がより強化する技術、補完しあう技術や分野を見極め、共同研究と人材育成を進めることが、両者共通の社会課題を科学技術で解決していくためにも必要と考える。

※本文記載のURLは2024年1月時点のものです(特記ある場合を除く)。