科学技術未来戦略ワークショップ報告書
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次世代通信技術の高度化に向けた無線・光融合基盤技術

エグゼクティブサマリー

本報告書は、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が令和3年11月13日に開催した科学技術未来戦略ワークショップ(WS)「次世代通信技術の高度化に向けた無線・光融合基盤技術」に関するものである。

本ワークショップは、無線・光融合基盤技術に関わる研究開発戦略策定を目的に開催した。ここでは、無線・光融合基盤技術として今後取り組むべき重要な研究開発課題や、それを実施する研究開発の体制・仕組みなどに関するCRDSの仮説(骨子案)を提示し、将来の社会像とそこでの次世代通信技術に対する応用面からの要求と期待、技術展望とコンソーシアムとしての取組、挑戦的な無線・光融合基盤技術の研究開発などについての話題提供を基に、総合討論で我が国が取り組むべき研究領域や、効果的な研究体制、異分野連携・産学連携、人材育成などについて議論した。

CRDSの仮説として、①技術競争力強化の観点:無線・光融合基盤技術に関する研究開発課題の設定、高周波測定・評価装置の共用施設、デバイス・モジュール作製のエコシステムの整備、長期的なファンディング、②産業競争力強化の観点:デバイス・モジュールの高性能化、小型化、低消費電力化、低価格化の研究開発、デバイス・回路などの革新技術創出とその特許化、大学・企業・コンソーシアム・関係府省が連携した国際標準化活動、③国際的な日本の存在感:無線・光融合基盤技術を主軸に異分野の研究者・技術者が集まる新たなコミュニティの形成と新たな学術領域研究の活性化、などの必要性を示した。

総合討論では、CRDSの骨子案や話題提供の発表と質疑、事前アンケート結果を踏まえ、システムの視点から取り組むべき研究開発課題、研究開発の推進方法・体制、コミュニティ形成と人材育成に関して議論を行い、以下のような方向性が示された。
(1)システムの視点で重要になる要素技術の研究課題: 新原理に基づく高効率・低消費電力の光電変換デバイス、ビームフォーミングを含めたアンテナ技術、高効率光電変換等の技術、異種材料接合技術、材料・機能の集積化技術など
(2)デバイスや材料の研究課題: 量産性・再現性・コストも含めて高出力・高効率な高周波用化合物半導体デバイス、テラヘルツ帯の材料特性評価技術、低損失の導電体材料・誘電体材料、誘電体導波路など
(3) 異分野の研究者を連携させる仕組み・研究体制: テラヘルツ領域の個々の要素技術をシステムでの利用に向けて繋ぐ仕組み、研究開発した先進的な素子や装置をコンペやイベントで他の研究・開発グループ等に実際に使用してもらう仕組み、高周波計測装置、デバイス試作装置・設備の共用化と長期的に維持していくための仕組み作りなど
(4) アカデミアと産業界との連携、コミュニティ形成、国際標準化活動、海外連携:学会などでの企業が直面している通信システムの様々な問題点・ニーズの産学での共有と連携した取組、次世代通信技術のシナリオの国内外のステークホルダーとの共有など
(5) CRDSの仮説、人材育成などに関する意見: 大きなビジョン、アカデミアと企業を集めるシナリオ・ストーリー、およびそのビジョンを実現する研究開発の実施が重要、次世代通信の研究開発には音頭をとる人(オーケストレーター)とともにダイバーシティが重要など

ワークショップでの議論を踏まえ、CRDSでは今後国として重点的に推進すべき研究領域、具体的な研究開発課題を検討し、研究開発の推進方法も含めて戦略プロポーザルを策定し、関係府省や関連する産業界・学界等へ提案する予定である。

※本文記載のURLは2022年2月時点のものです(特記ある場合を除く)。