戦略プロポーザル
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無線・光融合基盤技術の研究開発 ~次世代通信技術の高度化に向けて~

エグゼクティブサマリー

本プロポーザルは、フィジカル空間とサイバー空間をつなぐ高性能・高機能な次世代の通信技術に向け、これまでの無線と光、エレクトロニクスとフォトニクスの知見や技術をうまく活用して新たな基盤技術(無線・光融合基盤技術)を創出するための研究開発戦略である。

近年、フィジカル空間とサイバー空間を融合させた高度なデジタル社会の実現に向け、高速・大容量・低遅延・多数同時接続・低消費電力・セキュアな次世代の通信技術が期待されている。これまでの個人利用だけでなく、産業面での利用、社会インフラ・基盤としての役割も重要になっている。また、クラウドとエッジの携帯端末とをつなぐ移動無線通信は高速・大容量化が進み能力的に光通信との差が小さくなっており、無線通信技術と光通信技術のそれぞれの特長・利点を活かしたネットワーク構築に向けた技術開発やシステム設計が重要になっている。

一方、これまで無線通信の高速化・大容量化は数百MHz~数GHzの周波数領域を用いて、限られた周波数帯域の中で主に通信方式の高度化や多重化により高速・大容量化が行われてきた。しかし、Beyond5G/6Gやその先(7G)を見据えた場合、さらなる周波数利用効率の向上に向けた技術の創出とともに、広い周波数帯域の確保の点から数十GHzの周波数領域(ミリ波帯)からさらにその上のTHzの周波数領域(テラヘルツ帯)まで利用する技術開発が不可欠になると考えられる。テラヘルツ帯はこれまでの無線(マイクロ波帯)と光(可視光・赤外光)の間の周波数領域であるが、この領域は「テラヘルツギャップ」と呼ばれて、エレクトロニクス技術と光(フォトニクス)技術のいずれにとっても難しい領域であり、様々な技術的課題がある。これらの解決には、これまでの無線通信と光通信、エレクトロニクスとフォトニクスの知見や技術をうまく活用して新たな技術(無線・光融合基盤技術)を創出することが重要になり、新たな基盤技術の創出、および関連する基礎科学、材料科学に早期に取り組む必要がある。

今後取り組むべき研究開発課題としては、未踏の周波数領域の利用に向けた研究開発、無線通信と光通信の高度利用に向けた研究開発、低消費電力化・高信頼化・低価格化に向けた研究開発、技術進化を支える基礎科学・材料研究がある。
未踏の周波数領域の利用に向けては、指向性アンテナ技術、電波の反射・透過の積極的な利用、高効率のテラヘルツ波発振素子・検出素子・増幅回路、低伝送損失の新たな基板材料・導電体構造・誘電体材料、高周波材料特性評価手法・評価装置などがある。無線通信と光通信の高度利用に向けては、各種の多重化技術、超多数同時接続技術、超低遅延技術、無線信号と光信号の相互変換技術、高速・高効率なアナログ・デジタル変換技術などがある。低消費電力化・高信頼化・低価格化に向けては、異なる材料・デバイスを一体化するハイブリッド集積化およびモジュール化技術がある。技術進化を支える基礎科学・材料研究としては、、関連する物性科学や光科学などを含む基礎研究、エマージング材料やプロセス技術などがある。

上記の研究開発を効率的に進めていくために、長期的な視野に立ち、高度な高周波特性評価が可能な共用施設、デバイス・モジュールなどの試作が可能なデバイス作製の拠点とその拠点間の連携、機能検証可能な研究拠点などの整備、長期的なファンディング、国際標準化を見据えた産学官連携・国際連携、無線・光融合を主軸とする異分野が集まる新たな研究コミュニティの形成を提案する。

※本文記載のURLは2022年3月時点のものです(特記ある場合を除く)。