- バイオ・ライフ・ヘルスケア
加齢に伴う生体レジリエンスの変容・破綻機構 −老化制御モダリティのシーズ創出へ−
エグゼクティブサマリー
本戦略プロポーザルは、加齢に伴う生体レジリエンス(※)の変容・破綻機構のメカニズムを解明し、加齢性疾患の予見/予防的な診断・治療に向けた健康・医療モダリティ(医薬品など)の創出を目指すものである。
(※)定義:「生体レジリエンス」
「加齢などによって生体内に起きる分子・細胞、組織・臓器およびそれらのネットワークの変容に対し、それらの本来の機能を維持し続けるために、生体が適応する仕組み」
<問題認識> 本文「2.1.1」
健康寿命の延伸は、人々のQOL向上のみならず労働力人口の減少や社会保障費の増大などの問題解決にもつながりうる、重要な方向性である。健康寿命の延伸を阻害する主な要因が加齢性疾患であり、急速な高齢化に伴って予想される加齢性疾患(循環器疾患、筋骨格疾患、がん、脳神経疾患、感覚器疾患など)の急増が、国内外で大きな問題となっている。
<本戦略プロポーザルの研究対象と、目指すもの> 本文「1.1」
従来のライフサイエンス・臨床医学研究では、個々の加齢性疾患について、既に症状が進行した段階における診断・治療法の研究開発が中心であった。本戦略プロポーザルは、加齢に伴う生体レジリエンスの変容・破綻機構を研究対象とし、老化の本質的な理解を深めることで、加齢性疾患の発症メカニズムや、複数の加齢性疾患の根源にある共通原理などを解明する。これにより、医薬品などによる加齢性疾患の予見/予防的な診断技術・治療モダリティのシーズ創出を目指す。
<具体的な研究開発課題> 本文「3.1」「3.2」「3.3」「3.4」
次の4つの柱について研究開発を推進する。
- 【柱①:加齢研究を加速する先端計測・データ解析技術】
→ 1 細胞オミクス、ノンターゲット分析、マルチオミクス、イメージング、時空間オミクス、広範囲・ディープ・長期時系列の計測・解析につながる新たな技術コンセプト - 【柱②:加齢に伴う老化の基礎生命科学研究】
→ 多様な生命現象(栄養・代謝、炎症、生物時計、品質管理機構(核酸/分子/細胞ほか)、細胞間多様性、個体差、モデル生物、特徴的な老化関連表現型を示す非モデル生物、数理モデル・シミュレーション・AI - 【柱③:加齢に伴う老化の理解に基づく加齢性疾患研究】
→ 老化関連分子(群)・細胞(群)の探索と精緻な分類、多臓器間ネットワーク、こころと身体の関係、加齢に伴う老化の理解に立脚した加齢性疾患研究、加齢に伴う老化関連バイオマーカー、ヒト大規模データ基盤(AI・機械学習含む) - 【柱④:予見/予防的な診断技術・治療モダリティの臨床開発】
→ “ヒト老化進行度”の数値評価指標、加齢性疾患の予見/予防的な診断技術・治療モダリティの臨床開発、臨床開発シーズの多面的な価値評価(個人や社会への影響)
<推進方法> 本文「4.1」
バーチャル型研究所を構築し、研究所長の強力なリーダーシップのもとで研究を推進する。基礎研究テーマと出口に近いテーマをバランスよく採択することで、短期~長期的に成果を創出し続けるポートフォリオを設計する。当初研究計画の着実な達成に加え、想定外の成果創出を高く評価し、柔軟な研究費配分などを実施する。バーチャル型研究所では、研究環境の整備、多分野融合・人材育成に向けた環境整備、臨床開発に向けた環境整備を実施する。
<波及効果(社会・経済)> 本文「2.2」「2.3」
加齢性疾患に対する予見/予防的な診断・治療の実現による健康寿命の延伸への貢献、健康・医療関連産業(医薬品、ヘルスケア、保険など)の活性化への貢献、医療費・介護費の最適化への貢献が期待できる。
※本文記載のURLは2022年2月時点のものです(特記ある場合を除く)。