科学技術未来戦略ワークショップ報告書
  • 材料・デバイス

次世代オペランド計測 ~機能計測による新しい科学技術へ~

エグゼクティブサマリー

本報告書は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が令和2年11月25日、12月2日の2日間に渡って開催した科学技術未来戦略ワークショップ「次世代オペランド計測~機能計測による新しい科学技術へ~」に関するものである。

計測は科学の母、と言われるが、現代社会においては科学の発展のみにとどまらず、社会の諸問題の解決のための母であることが求められる。近年の環境・エネルギー問題への対応として、触媒や二次電池などを含む材料やデバイスの高機能化が目標とされ、使用環境、動作環境下での時間変化を追跡するオペランド計測が急速に発展してきた。計測技術やハード面の著しい技術進展もあり、優れた研究成果が挙がっている状況である。
しかし、オペランド計測の本来持つポテンシャルが充分に発揮されているわけではない。現状のオペランド計測にはいくつか問題点があり、必ずしも喫緊の社会問題の解決ニーズに応えられていない。例えば、ナノスケールでの計測が実用サイズでの機能に結びついていない、計測のモデル環境が必ずしも実環境とうまく合っていない、計測の空間・時間分解能が不十分、得られたデータから機能改善に必要な材料特性を得るプロセスが複雑、などである。これら、ニーズとシーズ間の「ギャップ」が存在することによって、必ずしも計測対象の機能解明に十分に踏み込めていなかった。さらに、オペランド計測の対象分野が限られている。このような背景を踏まえ、CRDSでは、現状のオペランド計測が持つギャップを解消し、材料やデバイスの機能を解明するための情報を提供しうる、さらには他の材料やデバイス、加えてバイオ・ライフサイエンス分野なども含め、広範な領域にも展開しうる「次世代オペランド計測」技術の確立を重要テーマの一つとして掲げ、その推進方策を検討している。

本ワークショップでは、研究開発ニーズを持つ企業に所属する専門家(セッション1)、計測技術シーズを持つ大学・国立研究所に所属する専門家(セッション2)、ニーズとシーズをつなぐ業務を日常的に行う計測サービス企業・機器メーカー所属の専門家(セッション3)からの話題提供をもとに、ニーズとシーズの間をいかにつなぐか、について議論した。さらに、最先端のオペランド計測技術開発に従事する研究者(セッション4、5)からの話題提供をもとに、「次世代型」のオペランド計測の方向性や将来像、実現のために解決すべき課題について議論し、次世代オペランド計測技術の構築に向けた重要課題の抽出を図った。また、CRDSが事前調査を通じて用意した仮説に基づいて議論をおこない、研究開発課題の推進方策などについて検討した。

本ワークショップでの議論を踏まえてCRDSでは、今後国として重点的に推進すべき研究開発領域、具体的な研究開発課題を検討し、研究開発の推進方法を含めて戦略プロポーザルを作成し、関係府省や関連する産業界・学会等へ提案する予定である。

※本文記載のURLは2021年3月時点のものです(特記ある場合を除く)。