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IoT時代のセンサ融合基盤技術の構築 ~センシング情報の高付加価値化に向けた多様なデータの取得と統合的処理~

エグゼクティブサマリー

IoTでは様々な場所に設置したセンサで様々な情報(データ)を取得し、そこからより高度で重要な情報を導き出すこと、すなわちセンシング情報の高付加価値化が求められる。これを実現する上で必要な、多様なセンシングデータの取得とその統合的処理のための基盤的技術を、本提言ではセンサ融合基盤技術と称する。本提言では、特にデータを生み出す側(エッジ側)のセンシングシステムに着目し、システムレベル、センサ端末レベル、センサレベルの3つの異なるレベルにおける研究開発を連携して推進することで、センサ融合基盤技術の構築を目指す。なお、ここでいう「センサ」とは目的の物理量や化学量を電気信号に変換して検出するデバイスのことであり、「センサ端末」とはセンサを含み、アナログ・デジタル変換回路、電池、通信回路等で構成され、測定対象近くに設置される機器のことを指す。このように、本提言では「センサ」と「センサ端末」を戦略の構成上、区別して扱う。

センシング情報の高付加価値化を可能にする高度なIoTシステムの実現には、クラウド・サーバ、ネットワークとともに、多様かつ有用なデータを取得・処理してクラウドに送るエッジ側のセンシングシステムが必要である。従来のセンシングシステムは、工場内のように限られた場所で特定の用途に使用されるものであり、取得・処理されるデータの種類・量も限定的であった。一方、IoTでは、データ収集の範囲が大きく拡張され、環境の情報、装置の稼働情報、人の健康情報など様々なデータを人間を介さずに収集する必要がある。

このエッジ側センシングシステム(以下、単にセンシングシステムと記載)は、データ取得のため測定対象の近くに設置される機器(センサ端末)と、取得したデータを処理してクラウドに送信する機器(エッジ側情報処理機器)で構成される。センシングシステムに対する要求機能は用途により異なるが、多様な情報の取得と統合的処理によってセンシング情報を高付加価値化することが、多くの応用領域で共通の方向性になっている。

そこで、本提言では、多様なデータの取得とその統合的処理をおこなうセンシングシステムの実現に向けて、下記3つのレベルの研究開発課題に取り組むことで、センサ融合基盤技術を構築することを提案する。
 課題①:センシング情報の統合的処理(システムレベル)
 課題②:センサ端末の最適化・高機能化(センサ端末レベル)
 課題③:センサ性能の向上(センサレベル)

研究開発課題の実施においては、全体のシステムアーキテクチャに基づき、異なる技術レイヤー間で連携して研究開発を進める必要がある。それには必要な基盤技術の開発能力を備えた基盤技術開発プラットフォームを構築し、異分野の専門家間の連携を促進することが有効である。また、応用サイドからの多様なニーズに基盤技術によって応えていくことが重要であり、そのためには(1)センシングシステムを実現する多様な基盤技術が常に最先端の形で整備され、利用可能になっていること、(2)応用サイドと基盤技術提供サイドとのニーズ・シーズマッチングを強力に進めるコーディネータが存在していること、が鍵となる。これらの機能を実現する物理的な拠点形成が求められる。

センシングシステムの研究開発、特に新規センサやセンサ端末などのハードウェア開発は時間を要するため、国の政策と産学連携の下、長期的な視点での取り組みが求められる。基盤技術開発プラットフォームを早期に整備するとともに、研究開発に腰を据えて取り組むことが重要である。アカデミアが個々に有する基盤技術を集積・統合し、社会への還元を促進する場としての役割が基盤技術開発プラットフォームには期待される。

※本文記載のURLは2020年3月時点のものです(特記ある場合を除く)。