- 材料・デバイス
- 横断・融合
共通基盤科学技術(製造加工) - デジタル情報を基にした製造加工の姿 -
エグゼクティブサマリー
本報告書は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が2018年3月11日に開催した俯瞰ワークショップ ナノテクノロジー・材料分野区分別分科会「共通基盤科学技術(製造加工)−デジタル情報を基にした製造加工の姿−」に関するものである。
ナノテクノロジー・材料の進展に不可欠な製造技術・加工技術に関する研究開発動向を広く俯瞰することを目的にワークショップを開催した。製造加工技術は新奇材料の登場や高度化に向けた成熟技術の漸次進展の側面と、材料プロセスと成形がより密接になった新たな技術展開の2つの側面を持つが、ここでは前者の技術として精密機械加工技術、後者の技術としてAdditive Manufacturing技術およびプリンテッドエレクトロニクス技術を取り上げて話題提供してもらい、材料機能の設計・制御とその加工手法、製造加工の新たな方向性、製造加工技術を基盤学術として維持発展させるための仕組みなどを総合討論で議論した。
機械加工の領域においては、切削加工分野における研究開発の方向性として高精度化、高効率化、自動化(スマート化)があることを超音波楕円振動切削法での実例で示し、人材育成としての実践教育の場の必要性が示されたほか、自動車への適用を目指した炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の塑性加工の試みと技術的課題、CFRP成形加工ロードマップ、原子レベルから製品レベルまでの各レベルを俯瞰したものづくりの必要性が示された。
Additive Manufacturingの領域においては、金属付加製造(積層造形)の先進動向、航空分野や医療分野での応用例、理想的な付加製造に向けた4つの課題(付加製造装置の高性能化、原料粉末の製造技術開発、プロセスモニタリングと計算機シミュレーションによる組織予測、形状制御と材質制御の両立)が示されたほか、微細な構造が形成できる光造形に関して加工線幅と加工速度との関係、3D造形技術や材料面などの今後の課題が示された。
プリンテッドエレクトロニクス技術の領域においては、印刷プロセスの俯瞰と特徴、高精細・微細印刷技術(親撥パターニング法)、界面制御技術の重要性、印刷プロセスの技術課題、横断領域を一体的に開発できる体制作り(拠点化)の必要性が示されたほか、印刷によるデバイス(トランジスタ、回路、センサ)の作製例、印刷による微細な有機トランジスタの特性、自己組織化単分子膜(SAM)によるコンタクト抵抗低減結果などが示された。
総合討論では、上記の趣旨説明および話題提供内容、産業技術総合研究所のオンデマンド製造の取り組み紹介を踏まえ、今後の製造加工の姿や日本が勝っていくための方策について議論した。
これらの議論の結果を踏まえてCRDSでさらに検討を加え、2018年度末に発行予定の「研究開発の俯瞰報告書 ナノテクノロジー・材料分野(2019年)」に反映させるとともに、今後国として重点的に推進すべき研究領域、具体的な研究開発課題の検討に活用する。