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ドメインスペシフィック・コンピューティング~新たなコンピューティングの進化の方向性~
エグゼクティブサマリー
本報告書は、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が平成29 年11 月29 日に開催した科学技術未来戦略ワークショップ(WS)「ドメインスペシフィック・コンピューティング ~新たなコンピューティングの進化の方向性~」に関するものである。
コンピューティングを活用する応用分野のボトルネックやユーザーが抱える技術的課題や将来技術への期待、新たに必要となる科学技術、その開発を促進するための政策などの議論を行い、革新的コンピューティングに関わる科学技術の強化に有効な研究開発戦略策定の一環として開催した。ここでは、CRDSの仮説を提示し、国内外の活動状況、ユーザー側からの革新的コンピューティングに対する要望、重要な研究開発領域とその取り組み方、などについての話題提供を基に、総合討論で日本のターゲットとすべき応用領域と重要な計算ドメイン、効果的な研究開発の仕組みなどについて議論した。
CRDSの仮説として、コンピューティングの重要なワークロードや日本の強みを見据え、複数の応用に共通する計算ドメインを志向した取り組みが必要であり、特定の技術レイヤーの技術開発に留まらず、ドメインスペシフィック・アーキテクトを中心に技術レイヤーを垂直統合的に取り組むことが重要であること、新たに創出される基盤技術を他のドメインへ展開し体系化して強化することを示した。また、ソフト開発・ツール開発・ハードウェア試作ができる研究環境を整備すること、産学連携のエコシステムを作ること、研究開発のファンディングに関して戦略的な府省の連携が必要なことなどを示した。
革新的コンピューティングに関する国内外の活動状況においては、国際学会、論文誌における最新の動向、ポストムーア/ポストノイマン世代に向けた国際ロードマップ活動の現状、日本工学アカデミーの「次世代コンピューティング」活動が紹介された。
ユーザー側からの革新的コンピューティングに対する要望においては、自動運転に必要なコンピューティング特性、製造・物流を中心としたロボットの最新動向と課題、内視鏡を例とした医療応用領域からの期待が紹介された。
重要な研究開発領域とその取り組み方においては、革新的コンピューティングを支えるソフトウェア基盤、知的情報処理時代を支える情報処理アーキテクチャの革新、ハードウェア側からの提案が紹介された。
以上のCRDSの骨子案や話題提供を基に議論した総合討論では、以下の方向性が示された。
競争領域よりも手前の段階で産学連携を生みうる領域として計算ドメインを考えるのは、競合他社や様々な企業が参加でき、国のプロジェクトとして合理的である。
信頼性、セキュリティ、リアルタイム性、精度、省電力など産業界からの要求と個別技術をマッチングさせることが重要。
自動運転やアミューズメントなど、本当に新たなコンピューティング技術が必要である程度のボリュームがあるキラーアプリが必要。
コア部分を共通化したプラットフォームで横展開し、ユーザー毎に味付けし差別化することが必要。
要求される計算機能とボトムアップの新技術とのマッチングが重要。
人材育成、スタートアップ育成の観点から設計ツールを自由に使える環境、トライアンドエラーができるエッジ用の環境・実験設備が必要。
ワークショップでの議論を踏まえ、CRDSでは今後国として重点的に推進すべき研究領域、具体的な研究開発課題を検討し、研究開発の推進方法も含めて戦略プロポーザルを発行する(戦略プロポーザルは2018年3月末発行予定)。