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ナノ・IT・メカ統合によるスマート小型ロボット基盤技術
エグゼクティブサマリー
本報告書は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が平成27年12月4日に開催した科学技術未来戦略ワークショップ(WS)「ナノ・IT・メカ統合によるスマート小型ロボット基盤技術」に関するものである。
現在あるいは将来のロボット開発の技術的課題や、新たに必要となる科学技術、その開発を促進するための政策などの議論を行い、今後の開発と普及が期待されるサービス系・見守り系のロボットを中心に、スマート小型ロボット基盤技術強化のために有効な研究開発戦略を策定するために開催した。研究開発課題およびその推進に関するCRDSの仮説、スマートロボットを利用するサービス分野に携わる産業界の問題意識や要望、動力系、センサ系、制御系を中心とする要素技術・基盤技術の新たな動向などの話題提供を基に、総合討論で戦略的に取り組むべき重要な研究開発課題、技術統合による機能実証やモジュール化、システム化を進めるプラットフォームの仕組み、研究拠点の体制、人材育成、社会受容などについて議論した。
今後発展が期待されるサービス分野でのロボットの利用では、従来とは異なる機能や性能が要求されため、ロボットの主要分野であるメカニクスと、進展の大きな情報通信やナノテク・材料など異分野の技術の融合・統合による新たな要素技術・基盤技術の開発と、これらの統合化、モジュール化を可能とする研究開発のプラットフォームの構築、オープンな研究開発拠点の構築が必要なことを、CRDSの仮説として示した。
ロボット技術の研究開発と実用化・事業化に向けての課題としては、産業用ロボットでリードしている日本の課題、欧米でのロボット研究開発の活発な動き、動く機械のロボットではなく産業的なインパクトが大きなロボット技術として捉えることの重要性などが紹介された。サービス視点からのスマートロボット基盤技術開発への期待としては、下水道におけるロボット利用、警備・セキュリティなどの分野におけるサービスロボット、生活支援用のロボットについての現状と今後の課題が紹介された。新たな要素技術・基盤技術としては、手術支援ロボットの要素・制御技術、新たなアクチュエータ技術、ロボット用のセンサ、生物に学ぶ制御技術・自律制御技術、認識や判断に優れた脳型LSIの回路・アーキテクチャなどが紹介された。
以上のCRDSからの仮説と話題提供を基に議論した総合討論では、以下の方向性が示された。
・システム統合と要素技術・基盤技術開発とが常に相互作用するロボット開発
・マーケットニーズを理解して要素技術開発を進めるプラットフォーム作り
・基礎研究、特定の技術応用、実用技術が混在し、戦略的なプログラム全体のデザインと、強いマネジメントの下での推進
・材料技術のように日本の強い技術をコアにしたロボット技術開発
・動力系、センシング系、制御系の要素技術・基盤技術が混然一体となるプロジェクト
・産学連携でモジュールイヒ・システム化を進めた技術のアカデミアへの蓄積
・トップダウン的な推進だけでなく、地方の研究者のアイデアを持ち寄れる仕組み作り
本ワークショップの議論を踏まえてCRDSでは、今後国として重点的に推進すべき研究開発領域、具体的な研究開発課題、その推進方法の検討を含めて、戦略プロポーザルとして提言を発行した(戦略プロポーザルは2016年3月末発行)。