科学技術未来戦略ワークショップ報告書
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知のコンピューティングとELSI/SSH

エグゼクティブサマリー

独立行政法人科学技術振興機構(JST)研究開発センター(CRDS)は、、現代社会にあふれる知識と情報に対して、われわれがこれを活用をしきれていないのではないかという問題意識の下、「知のコンピューティング」を提唱し、知の創造、蓄積と流通を促進し、人間の科学的発見を加速し、人々が日々賢く生きるための仕組みづくりに向けた研究開発の検討を進めてきた(次ページの表)。その結果は、戦略プロポーザル「知のコンピューティング-人と機械の創造的協働を実現するための研究開発-」として発行した。また、文部科学省においては、同プロポーザルの提言内容を含んだ戦略目標「人間と機械の創造的協働を実現する知的情報処理技術の開発」を公開し、さらに、JST においても CREST「人間と調和した創造的協働を実現する知的情報処理システムの構築」2研究プロジェクトを始動した。このような知的情報処理技術の研究開発が進展し、実社会への適用が次々と実現することに対して、CRDS は、情報科学技術の研究者・技術者においても、倫理的・法的・社会的(ELSI: Ethical, Legal, and Social Issues)な視点での考慮は不可欠であると考えている。なお、ELSI は、米国が 1990 年にヒトゲノム計画を立ち上げた際に、研究に潜む倫理的・法的・社会的問題を同時に研究することを目的に行われるようになったものである3。本ワークショップでは、人文社会科学 (SSH: Social Science and Humanities)および情報科学関連の有識者が集い、戦略プロポーザル「知のコンピューティング」の描き出す未来像に対して、人文社会科学/情報科学の双方からプロジェクトの推進において必要となる ELSI に関する論点を議論した。前半は論点提供として、情報科学関連の有識者 4 名と人文社会科学関連の有識者 5 名から ELSI にかかわる多岐にわたる論点が提供された。後半の総合討論では、産業界と経済学の有識者 2 名を加えて、今後、特に研究開発を担う研究者のコミュニティにインプットすべき重点項目につき議論した。図は論点を2次元上にマッピングして整理しようと試みたものである。本ワークショップで議論した結果は、2014 年 11 月 7 日の「激論! 先端 ICT の光と影」ワークショップに集う知のコンピューティングの研究者コミュニティへのインプットとすることで、今後の研究開発における ELSI 関連研究の取組みを加速することを目指す。と、同時に、CRDS では、今回のワークショップを、人文社会科学及び情報科学の研究者が共に議論する活動の出発点と位置づけ、今後とも継続的に議論する場を提供すべく取り組む所存である。
なお、本ワークショップの論点を広く一般の方に理解いただくために、有識者の講演の様子を録画して JST のホームページ上で公開する。合わせて参照されたい。