ワークショップ報告書
  • 海外動向

JST/CRDS・中国科学技術信息研究所共催研究会 ~日中若手トップレベル研究者を取り巻く研究環境~

エグゼクティブサマリー

我々が属する独立行政法人科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)は、中国の科学技術部に属する科学技術信息研究所(ISTIC)とMOU を結び、国際的な科学技術情勢分析に関して協力を実施しており、その協力の一環として、毎年特定のテーマを定めて双方の職員の参加のもとでワークショップを開催している。
今回のワークショップは、日中若手トップレベル研究者のインタビューの分析結果を中心に実施した。
これまでのワークショップは、特定のテーマを定め、双方が別々に情報収集していたデータやその分析結果を持ち寄って開催されてきた。例えば、昨年の6 月に北京で開催されたワークショップのテーマは、「主要国のファンディング・システム」に関するものであり、日本側CRDS の海外動向ユニットでは、その前年(平成24 年度)に実施した調査の結果を基に参加しており、中国側はこれとは独立した調査に基づき参加した。
しかし、今回は協力のステップをさらに進め、調査分析の段階から双方で協議しつつ進めた。具体的には、昨年秋に日中若手トップレベル研究者の意識調査を行うことで合意し、また、インタビューの際の質問事項をお互いに確認して、同一のものを使用することとした。インタビューは昨年末から本年はじめにかけて、日本人研究者に対してはCRDS が、中国人研究者に対してはISTICが実施した。インタビュー結果を項目別に並べ替えて分析し、それを持ち寄って発表して議論したのが、今回のワークショップである。従って、これまでのワークショップによる協力より、さらに一段深化したものとなっている。
今回のワークショップのもう一つの特徴は、開催された場所である。従来は中国側のISTIC が所在する北京で実施されてきたが、今回は青海省で開催された。ISTIC のワークショップの責任者である張旭博士が、現在青海省科学技術庁のNo.2 である副庁長として出向中であり、彼のイニシアティブで同科学技術庁の傘下にある青海省科学技術信息研究所をホストとして開催にこぎつけることが出来た。
青海省は中国の西部に位置し、チベットやモンゴルの文化を色濃く残している。また、省内にある青海湖は中国最大の湖であり、地球上でも米国ユタ州のグレートソルト湖に次いで2 番目に大きな内陸塩湖である。この青海湖のある青蔵高原には、中国の二大河川である黄河と長江、さらには東南アジアの大河であるメコン川の水源地帯があるという。ワークショップが開催された青海省の省都である西寧市は高度2000 メートルあるが、そのようないわゆる僻地であっても、200 万近い人口を擁し、高層ビルが立ち並び、高速道路が完備されている状況を見るに付け、中国の経済発展の凄まじさを改めて感じた次第である。