科学技術未来戦略ワークショップ報告書
- バイオ・ライフ・ヘルスケア
2014年3月
CRDS-FY2013-WR-13
先制医療のための自己再生システムに関する基盤技術の開発~これからの再生医療研究のあり方~
エグゼクティブサマリー
科学技術振興機構(JST)/研究開発戦略センター(CRDS)は、社会ニーズを充足し、社会ビジョンを実現させる科学技術の有効な発展に貢献することを目的として、研究開発戦略立案を行い、関係省庁へ発信してきた。平成 25 年度において、CRDS では、重要領域として「再生医療」を抽出し、平成 25 年 6 月から、調査・検討活動を行ってきた。
狭義の再生医療とは、体外で調整した細胞を移植することで、移植細胞が、機能低下・不全した組織・臓器の機能を代替することで、機能再生させる医療を指す。取り替えることで再生させるコンセプトであるため、疾患が重篤化し、他の治療法がない場合においても有効と考えられ、治療の切り札として期待されている。しかしながら、現在の再生医療技術の多くは、角膜や表皮、軟骨などの一部の組織を除き、このような狭義の再生医療ではなく、移植細胞からの分泌物等が患者の体内にある細胞(内在性細胞)に働きかけることによる治療効果(自己再生)であることがわかってきた。したがって、内在性細胞の自己再生能が低下するほどの重症化した場合は、高い治療効果が見込めないことになる。しかし、逆に言うと、内在性細胞の自己再生能が高い疾患早期に介入することができれば、高い治療効果が期待できる。このような背景から、CRDS では、より早期に介入することで高い自己再生を引き出す「先制的自己再生」のコンセプトを創出し、検討を行ってきた。
本ワークショップでは、各疾患領域の専門家を招聘し、「先制的自己再生」の将来性や実現性、対象疾患の検討、事業化および社会実装の課題、具体的な研究開発課題について議論を行うことを目的とし、議論を行った。