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将来展望調査報告書【アジア編】情報科学技術分野(2013年度)

エグゼクティブサマリー

 国内に閉じない視点でグローバルトレンドを把握する活動の一環として、アジアの先進的な情報技術(IT)活用実例の調査を行った。現地を訪問し、ITを用いて社会を変革しようとする機関の活動を実地に見聞するとともに、有識者にインタビューを行い、社会の課題を抽出した。
 事例は二つに分類できる。一つは、BOPと呼ばれる農村地帯で進められている、ITの新しい活用による生活の変革である。代表的な社会企業であるインドのDRISHTEE、バングラデシュのGrameen Communications、大学のビジネスインキュベーション施設であるインドのRTBI(Rural Technology Business Incubator)、貧困撲滅のための教育を実践しているマレーシアのSOLS24/7を訪問し、社会活動がITによってどのように活性化されているかを見ることによって、ITの新しいニーズを探った。
 もう一つは、平均所得が比較的高い国やコミュニティで進められている、高度なITの開発とそれを活用した社会インフラの変革である。政府が強いリーダーシップを発揮し技術の社会適用がスピーディーに進んでいる典型的な例として、シンガポール政府、さらに日本の大手IT企業で近年シンガポールに研究開発拠点を設置したNECシンガポールを調査した。
 これらの機関の抱える課題は都市、農村、農地、資源、高齢者などさまざまである。しかし、どこへ行っても共通的に挙げられた課題は、「格差」と「持続性」、「ITインフラの整備」であった。
 異なる立場の有識者が提起する課題が、日本も抱える共通の課題にグローバルな文脈を与えてくれた。今後、これらの知見を情報科学技術の研究開発領域の策定に活用する。