科学技術未来戦略ワークショップ報告書
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細胞ICT

エグゼクティブサマリー

本報告書は、(独)科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が平成23 年 11 月 16 日に開催した科学技術未来戦略ワークショップ「細胞 ICT」に関するものである。
CRDS では、情報通信技術(ICT)およびナノバイオの今後 10 年から 20 年の進展を見据えた上で、これらを融合した診断・治療統合技術の可能性を探るとともに、そのような技術を実現するために必要な基礎研究領域とそこで取り組まれるべき研究課題を明らかにすることを目的に検討を開始した。
ICT の分野では、2025 年には 8 ビットマイコンを 10 μ m3(細胞サイズ)で技術的に実現できると言われており、医療、ヘルスケアへの応用に向けた研究が活発化している。ナノバイオの分野では、診断を「生体内」化、外部信号制御型ナノマシンのように制御性・自律性を付与したデバイス、さらには診断治療を統合的に実施できるデバイスの開発が今後の重要課題として取り上げられている。このような開発動向や今後の課題は、センシング、プロセシング、オペレーションという工学的機能を生体内で実現しようとする試みとみることができる。CRDS ではこのような分野融合的な研究開発の方向性を「細胞 ICT」と仮称し、その内容を次のように定義した。

細胞 ICT
一定の自律性をもって体内で動作し、疾病診断および(または)治療の機能を有するデバイスと、そのデバイスを制御する技術とのセットからなる新しい診断治療技術基盤の構築

ワークショップでは、医学、医工学、脳科学、MEMS、エレクトロニクス、生体機能化学、分子ロボティクスなど幅広い分野から 12 名の有識者の参画を得て、細胞 ICT から想定される医療を描いた上で、そこで必要とされるデバイスやその制御等を実現するために必要な研究開発課題の抽出を試みた。