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国際競争力強化のための研究開発戦略立案手法の開発—日本の誇る「エレメント産業」の活用による「アンブレラ産業」の創造・育成—

エグゼクティブサマリー

研究開発戦略センター(CRDS)では、「アンブレラ産業」と「エレメント産業」という新しい産業種別の概念を導入し、産業の国際競争力強化のための研究開発戦略を、より精緻に立案する手法を開発した。
「アンブレラ産業」とは、部品や材料を組み合わせ、システムとして構築したもの、あるいはそれらハードウェア技術と、全体システムとして最適な機能を発揮するためのソフトウェア技術とを組み合わせ、付加価値の大きなシステムを構築し、産業連関的にも、社会的・経済的にも、大きな価値を生み出すシステムを生産する産業と定義し、アンブレラ産業が生産する製品を「アンブレラシステム」と呼ぶ。一方、アンブレラシステムに組み込まれる構成要素としての部品・材料や独立性の強いソフトウェア技術を「エレメントシステム」とし、それらを生産する産業を「エレメント産業」と定義した。

CRDSでは、日本の誇る国際競争力の強い部品・材料産業を中心に、強い産業を網羅的に強化するという方策をとらず、アンブレラ産業という高付加価値産業を目標に掲げ、それを実現するために必要となる具体的な研究開発課題を明らかにし、それらの課題解決に時間軸を導入し、推進するという研究開発戦略の可視化手法を提言する。この手法に従うと、「CRDSアンブレラ産業」およびその実現のために誘引されるエレメント産業の両産業において、系統的に、世代発展的に、科学技術イノベーションやオープン・イノベーションを誘発できる研究開発戦略を立案できる。

「CRDSアンブレラ産業」は、以下の4つの基準を満たすものとし、これらを基準として創出した「CRDSアンブレラ産業」を横軸、「エレメント産業」を縦軸とした「科学技術イノベーションを誘発する研究開発戦略立案のための産業技術俯瞰図」を創り上げた。
1.地球規模課題の解決を指向したものであること
2.その産業を創造するには、科学技術イノベーションを必要とすること
3.社会的・経済的価値が大きく、日本のGDP向上に大きな貢献ができるものであること
4.日本が創造することが世界的にも優位で、日本はそのポテンシャルを有し、世界からも期待されていること

CRDSアンブレラ産業は大きく2つの領域に分かれる。一つは「日本の誇る国際競争力の強いエレンメント産業を基盤とし、高付加価値創出を狙った新たな産業」、もう一つは「現在は国際競争力との関連は薄いが、生活基盤および社会基盤として肝要な産業」である。前者は、産業分類的には、エネルギー産業、資源開発産業、環境産業、情報通信産業および輸送産業に分けられる。この領域には28のCRDSアンブレラ産業を創出した。後者は、食料産業、医療産業、建設産業および教育産業に分けられ、9のCRDSアンブレラ産業を創出した。