戦略プロポーザル
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ナノシンセシス − 創造的ものづくり−

エグゼクティブサマリー

ナノテクノロジーの研究開発の成果は、情報処理デバイス、記録デバイス、通信デバイス、エネルギーデバイス、センサといったナノデバイスおよびナノシステムとして社会に還元され、これらのナノデバイス・ナノシステムは、いずれも我が国の産業として将来にわたって重要である。
これらのナノデバイス・ナノシステムを創出するためには、顕在化している、あるいは潜在的な社会ニーズや産業技術トレンドを捉えた目指すべきナノデバイス・ナノシステムの着想を技術要素へブレークダウンすることによって具体化・検証し、試作中心のものづくり研究と目的指向型の基礎研究とを並行して進め、その中で複数の技術・知識を集約・融合し、目指すナノデバイス・ナノシステムを創り上げる「シンセシス型」の研究開発が求められる。加えて、現時点では製造技術が断片的かつ未熟であるため、たとえナノデバイス・ナノシステムの研究開発が進んでも、ナノデバイス・ナノシステムの最終形態の実現まで至らないという問題もある。

そこで本戦略プログラムでは、以下の2種類の研究開発を促進させることを提案する。
1)新たなナノデバイス・ナノシステムを試作品にまとめあげるシンセシス型の研究開発
2)創出したナノデバイス・ナノシステムを産業として成立しうる形態や規模で高効率に製造するための技術開発
1)の研究開発課題は目指すナノデバイス・ナノシステムの着想と技術要素へのブレークダウンの過程で生ずるが、例示として次のようなものが考えられる。
(1)情報通信ナノ固体デバイス:高周波部品等が集積化された高機能システムLSI,量子コンピュータの原理実証デバイス,・フォトニック結晶に代表される光ナノ構造と電子回路との集積化、など
(2)バイオ・メカニカルデバイス・システム:高周波集積回路と一体化されたメカニカル高周波デバイス、無線通信機能が一体化された自立センサ、個人のDNA 解析を超安価・超高速に実現するDNA シーケンシングデバイス、など
2)は、目指すナノデバイス・ナノシステムの製品化を見据えたスケールアップ可能な製造技術の研究開発であり、次のような例がある。
トップダウン加工技術とボトムアップ加工技術との融合,新規構造CMOS 製造技術,最先端集積回路上へのバイオ・メカニカルデバイスの低温加工技術、実装に多用される有害物質や希少物質のナノ材料による代替、など。

また本戦略プログラムでは、研究開発プロジェクトを効率的に推進するための提案として、1)シンセシス型の研究開発に合ったファンディング制度の構築、2)研究開発設備、共用施設などの研究インフラストラクチャーの費用対効果の高い運営・利用方策の措置についても述べる。