【プロジェクト訪問】シンポジウム『公私で支える高齢者の地域生活』

開催日:2018年(平成30年)10月31日(水)
会場:中央大学駿河台記念館(東京都千代田区)

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  • photo:『認知症と民法』チラシ

シリーズ開催のシンポジウムには、以前もお目にかかったお客さまもちらほらと。ニーズに応える成果情報をお持ち帰りいただけましたら幸いです。
今回は、プロジェクトの成果を取りまとめた書籍のシリーズ第一巻出版の報告も行われました。主に支援者向けの情報が詰まっています(上のチラシのダウンロードも可能です)。

小賀野プロジェクトでは、認知症などで判断力が低下しても、安全に自立した経済活動を続ける方法を探っています。今回は、ここまでの成果の報告を行うとともに、会場からご意見・ご質問などのフィードバックをいただきました。

プログラム

Photo『高齢消費者保護の取り組み』
一般社団法人シニア消費者見守り倶楽部 岩田美奈子氏

話題提供

Photo『現代民法と消費者法の課題』
中央大学法学部教授 小賀野晶一氏

Photo『認知症の人の経済活動を支えるためにできること~医学的視点から~』
京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学教授 成本迅氏

パネリスト

  • 吉冨康成氏(京都府立大学) 『認知症・高齢者の経済活動のリスク検知』
  • 角谷快彦氏(広島大学) 『認知症と経済』

高齢者の経済活動を、
法律や制度で支援する方法を考える

年齢とともに、認知症などで判断力が衰えるリスクが高まり、日常的な経済活動も難しくなってきます。不要な高額契約を結ぶ、無駄なものを買う、詐欺被害に遭うなど、支援が必要なケースが発生するかもしれません。
岩田氏の基調講演では、主に詐欺被害について、神奈川県内での現状と取り組みをご紹介いただきました。狙われがちな高齢者の意識改革のための活動や、自己通話録音機の貸与など、小さな団体でもできる活動で、当事者のセルフディフェンス力と周囲の支援の力を高めています。さらに、警察や地域の支援センター、弁護士等とのネットワークを築き、継続的な活動につなげています。
話題提供では、小賀野代表と成本氏からそれぞれ、法制度の視点と医学的な視点での支援のありかたが提案されました。たとえば成年後見人制度は、必要性を感じたらすぐに使っていただきたい優れた制度ですが、普及が進んでいているとは言い難いです。制度を上手に使うための支援があれば、さらに使いやすくなるはずです。
RISTEXの活動ではありませんが、今年6月には小賀野氏や成本氏らが理事となり、本人の意思決定能力を確認しながらより効果的な意思決定の支援を行うことを目指し、一般社団法人日本意思決定支援推進機構を立ち上げました。書籍とともに、みなさまにご活用いただけましたら幸いです。

Photo

地域で暮らす高齢者のために必要な支援について、民法、医療、個人情報の観点から解決策を探る「公私で支える高齢者の地域生活」シリーズが勁草書房から発刊されます。今回のシンポジウムでは第一巻『認知症と民法』(小賀野晶一・成本迅・藤田卓仙編) をご紹介しました。

高齢者の経済活動を支援することは
社会全体の経済活動を支援すること

後半は、吉冨氏と角谷氏を加えてのパネルディスカッションののち、質疑応答を行いました。「個人的な問題ではなく、なるべく一般的な質問を」という前提でしたが、皆さんそれぞれにご自身のお悩みを抱えたかたが多いのか、どうしてもわが身に引き寄せての質問内容になっていきます。中でも意外な示唆となったのが、「事業を営んでいるが、認知症を理由に契約をキャンセルされてしまうのは困る。どうしたら未然に防げるか」という質問でした。
「認知症の当事者とその家族を守る」だけでは終わりません。高齢者の経済活動の問題は、社会全体の経済活動に波及する問題です。実は、今回のシンポジウムでご案内した書籍『認知症と民法』の中でも、そうした「事業者への視点の不足」が指摘されています。

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5名のパネリスト以外にも、会場の客席にプロジェクトのメンバーが待機。会場からのご質問には、専門のメンバーがお答えします。

年齢を重ねても、犯罪に巻き込まれたり不当な扱いを受けたりすることなく、できるだけいままで通りに外出したり買い物したりできる暮らしを続けていきたいものです。プロジェクトでは引き続き、高齢者の適切な支援や法整備に向けて、活動を続けていきます。

※所属・役職は、取材当時のものです。
(文責:RISTEX広報 公開日:平成30年12月28日)

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