【プロジェクト訪問】コアトリエとうほくサミット&マルシェ

【開催報告】
2018年(平成30年)9月1日(土)
会場:せんだいメディアテーク・勾当台公園(宮城県仙台市)

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国内外の観光スポットとして知られる、東京駅の丸の内駅舎。その美しい外観でとりわけ目を惹く、屋根に葺かれた黒い石板は、岩手県石巻市雄勝町産の天然スレートです。
雄勝町は、国内唯一の天然スレート産地でしたが、震災を機に生産がいったん中止され、職人の数も減るなど、その技術は存亡の危機にあります。大沼プロジェクトでは、東北エリアに点在するそうした貴重な"技"を備えた生業に、地域を持続させるヒントがあると考えました。知る人ぞ知る"技あり"産業の魅力を語り合うサミットと、"技"を体感し製品の購入もできるマルシェ、本日同時開催です。

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サミット会場は、カフェや劇場、アートギャラリー等が併設された公共図書館『せんだいメディアテーク』の1階、仕切りの無いオープンなイベントスペースです。サミットを紹介するボードの前では、施設を訪れた皆さんが足を止める姿が見られました。嬉しいことに、そっと隅の席に座ってくださるかたもちらほらと。

地域の多彩なコアトリエを、つなぎ再構築する
「この地に"技あり"プロジェクト」の試み

「コアトリエ」とは、「共に」という意味の接頭語coをつけたアトリエ。地域の生業として受け継がれてきたものづくりの"技"を持った高齢者と、新しい生業を育みたい地元の方々、地域外のデザイナーなど、多世代多様な人々が共に価値を生み出す現場を指します。
大沼プロジェクトでは現在、東北7県に散在するコアトリエをつないでの活性化を試みています。今回のサミットでは、多彩な"技あり"の皆さんに、地域に根差した生業についてお話いただきました。
昔からの技術といっても、みなさんそれぞれに、新しいノウハウを取り入れていたり、時代に合わせた製品開発に取り組んでいたり、大量ではないにせよ継続的なニーズがあったりする、「生きた技術」ばかりです。一方で、需要が事業として成り立たない量であったり、技術職ゆえに後継者が育つまでに時間がかかったりと、悩みは尽きません。
「地元にあれがあったな、と思い出したときに、その資源がまだ残っていることが大事」という発言もありました。「裏作」として、細々と、けれども決して途絶えることなく丁寧に受け継がれてゆく。そんなスタイルの生業をきちんと支え続けるには、どのような仕組みが有効なのでしょうか。既にネットワークづくりは始まっています。

プログラム

開会

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大沼正寛代表(東北工業大学)のご挨拶

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相田合同工場(新潟県三条市)「土がつくる鉄のかたち・三条燕の鍬と野鍛冶」相田聡氏
佐藤茅葺店(秋田県横手市)「小さな茅葺き小屋から風景を育てる」佐藤偉仁氏、古屋睦子氏
陸前スレート千軒講(宮城県石巻市ほか)「玄昌石の家並みを残す地縁と技術」小野寺和伸氏、佐々木信平氏、永沼あずさ氏、藤倉泰治氏
コーディネーター:阿部正氏、竹内泰氏

「地元では、(近代的でなくて?)恥ずかしいという声もあるものが、外から見たらとても魅力的だったりします。地域はもっと地元の個性に自信を持っていいと思います」

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工房ストロー(山形県真室川町)「藁を活かした手仕事と食べ物」(豪雨のため欠席)
大野木工生産グループ(岩手県洋野町)「一人一芸の村・木工クラフト」中家正一氏
丸森コアトリエ(丸森町)「シルクをめぐる丸森まなみやげ」安島陽子氏、阿部倫子氏、舩山達子氏、星とみ子氏
コーディネーター:田澤紘子氏、宮本愛氏

「支援制度に頼りきらないことが大事。いいものを作りたい気持ちを保って、作り手と使い手の関係を大切にして、しっかり営業もして、後継者は全国に求めて」

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阿仁マタギ(秋田県北秋田市)「マタギと山のくらし術」木村望氏、鈴木英雄氏
よっちゃん農場(宮城県大崎市)「発酵のまち大崎の仲間たち」高橋博之氏
SAVE IWATE(岩手県盛岡市)「和ぐるみプロジェクト」寺井良夫氏
県漁協唐桑支所(宮城県気仙沼市)「唐桑 秘宝 海の味」織笠有加氏
コーディネーター:佐々木秀之氏、菅原香織氏

「目の前の山から、海から、次々届く食材は、毎日とにかく美味しい! その味に魅入られ、移住し定住するひとも。次の課題は、外のひとにもその味を伝えること」

総括座談会

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江頭宏昌氏(山形大学 山形在来作物研究所)
佐藤純子氏(丸森町教育長)
早坂正年氏(BLUEFARM inc.)
大和田順子(RISTEX多世代領域アドバイザー)
大沼正寛氏(東北工業大学 当プロジェクト研究代表者)

「昔はよかったとか、伝統を守ろう、で終わらない。地域を横につなげ、共創していきましょう。若い世代の関与はほんとうに頼もしい!」

東北に点在するコアトリエから
その"技"と、購入できる製品を集めたマルシェ

マルシェを開催する勾当台公園までは、サミット会場から徒歩5分です。
地下鉄の駅から勾当台公園に入ると、目の前には"技"を実際に体験できるコーナーが用意されていました。奥のスペースは、コアトリエ製品を取り揃えたマルシェ。個性の際立つ製品の数々を、実際に手に取り購入もできます。
取材者はもちろん、サイトビジットに伺っていたアドバイザーや総括も、会場をひと回りしたあとは、まんまと複数の買い物袋をぶら下げておりました。

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極めて希少な国内産スレートの、これまた滅多にないカット体験も。隣の茅葺コーナーでは、昔話に出てきそうな外観の小屋に、子どもたちが興味シンシンです。

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コアトリエの製品が並んだマルシェ。少しずつ、東北のネットワークは広がりつつあります。

大沼プロジェクトでは、研究目標として、地域資源を活かした生業の共創と連携を、持続的な産業の再構築へつなげることを掲げています。経済面での発展も大切にしてはいますが、それ以上に、たとえば地方ならではの特色を備えた豊かな文化や、その文化を背景に育まれる生活景に注目し、一過性のものではない地域の活性化を目指しています。
ただいまコアトリエのデータベースも構築中。ユニークな製品が並ぶマルシェが数倍にスケールアップするのを想像すると、今から楽しみです。

※所属・役職は、取材当時のものです。
(文責:RISTEX広報 公開日:平成30年10月19日)

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