ELSI論点マップ

「ゲノム倫理」研究会では、これまでの調査結果を踏まえ、CREST/さきがけ「ゲノムスケールのDNA設計・合成による細胞制御技術の創出」領域(以下、「CREST/さきがけ「ゲノム合成」領域」という)固有のELSI論点の抽出・分析を行い、ELSI論点マップの作成を行っています。

ELSI論点マップ2021

「ゲノム倫理」研究会での発言等をもとにCREST/さきがけ「ゲノム合成」領域の個別プロジェクトのELSI論点を抽出し、当該領域研究者に対するオンライン・インタビューを行いました。それらのデータをもとにマップを作成しました。

ELSI論点マップ2021

ELSI論点マップ2022

CREST/さきがけ「ゲノム合成」領域研究者および「ゲノム倫理」研究会メンバーを対象にアンケートを実施し、ELSI論点に対する研究者の認識について調査を行いました。そこで得られた共通点や差異等のデータをもとに整理の軸を変えた下記の二つのマップを作成しました。

研究対象との関連性におけるマップ

研究対象の分類を起点に配置し、実用化度合いを加味して整理したものです。

[ゲノム合成分野ELSI論点マップ(研究対象との関連性)]

  • 簡明に表現することを目的としましたため重要であっても配置しづらい関連性については表現できていません。
  • すべての論点や関連性を網羅しているものではない点に留意してください。

マップの構造について

[ゲノム合成分野ELSI論点マップ(研究対象との関連性)]は研究対象の分類を起点に配置し、実用化度合いを加味して整理しています。
ただし、簡明に表現することを目的としましたため重要であっても配置しづらい関連性については表現できていません。
すべての論点や関連性を網羅しているものではない点に留意してください。

図 ELSI論点が研究手法とのつながりが強い側面をもつことから、本マップでは研究対象を基準に論点を配置しています。
ヒト、ヒト以外の高等動物、植物/農作物、微生物、ウィルス、人工細胞、無細胞、情報・DBに分類しています。
各ELSI論点は関連の深い研究分類ワードから放射状に移動させた位置に配置しています。
図 ELSI論点が研究成果の実用化のステージ/進展度合いとも強いつながりをもつことから、本マップでは円の外側に近づくほど実用化の度合いが高まるように配置しました。最も内側には、研究企画や研究開始の時期として、研究費の配分を意味する「ファンディング」と政策的ビジョン、個人の研究者のビジョンの両方を意図して「ビジョン」の用語を配置しました。
最も外側には、実用化の到達目標である最終的な実現目標や研究がもたらす良い効果を示す用語を配置しました。
図 マップ作成にあたり、ゲノム合成研究者とゲノム倫理研究者の意見を聴きました。その結果、挙がった重要論点は、ゲノム合成技術の「ヒトへの応用」、「Dual Use」(研究成果の軍事利用、民生利用両面性)、「研究の自由・自治」の3点でした。
これらの3点は複数の論点を包含していることから、包含される論点を破線で囲って示すことで強調しました。
また、両者で重要度の順位に差異が見られたので表題の文字色で以下のように区別し、共通するものは文字色を重ねました。
ムラサキ文字:ゲノム倫理研究者視点の重要論点1位/2位
青文字:ゲノム合成研究者視点の重要論点1位/2位

研究活動と社会との関わりにおけるマップ

研究者が学術界、産業界、一般社会との関わりの中で「研究活動」を進めていったときに、関連するELSI論点を示したものです。「研究活動」の具体的な流れとして、研究計画、倫理審査、ファンディング、研究活動という研究プロセスを示しています。

[ゲノム合成分野ELSI論点マップ(研究活動と社会との関わり)]

【配置の説明】
研究計画⇒倫理審査⇒ファンディング⇒研究活動、のプロセスに関連して、ELSI論点を配置した。基礎研究を進める上で留意すべきELSI論点は、「誤用・悪用」、「研究の自由・自治」、「科学リテラシー」、 「規制・ルール」、にわけて配置した。
研究成果の社会実装にあたって留意すべきELSI論点は、「産業応用」、「誤用・悪用」、「ヒトへの応用」にわけて配置した。
研究成果の社会還元には、ELSI論点の「山」を越える(ELSI論点を踏まえて研究開発を実施する)必要がある。

注:本マップはELSI論点とゲノム合成研究の関係性を簡明に表現することを目的とした。そのため、重要であっても配置しづらい関係性については表現できていない。全ての論点や関連性を網羅しているものではない点に留意いただきたい。
【文字色の説明】
灰色ボックス:ELSI論点
黄色ボックス:研究成果がもたらす価値
橙色ボックス:実現目標

マップのそれぞれの部分についての具体的な説明は下記です。

「研究活動と学術界」に関わるELSI論点 (マップ左上部)
「誤用・悪用」と「研究の自由・自治」の論点を配置しています。それらのELSI論点を踏まえて研究活動を進めていくと、「ゲノム構造と機能の解明」、「ゲノムDNA技術」、「ゲノム設計の基盤技術」、「人工細胞の構築」などの成果が生まれることが期待できます。そして、その先には実現目標として、「生命の理解」があります。

「研究活動と一般社会」に関わるELSI論点(マップ左下部)
「科学リテラシー」と「規制・ルール」の論点を配置しています。それらのELSI論点を踏まえて研究活動を進めていくと、「科学教育の振興(科学リテラシー)」や「国際協調・ルール策定」などの成果が生まれることが期待できます。そして、その先には実現目標として「社会受容性の向上」があります。

「研究活動と産業界」に関わるELSI論点(マップ右部)
「産業応用」と「誤用・悪用」、「ヒトへの応用」の論点を配置しています。それらのELSI論点を踏まえて研究活動を進めていくと、「伝統農法保護」、「原種・土着種の保護」、「環境アセスメント」、「食品安全」、「環境保全」、「有用物質の生産」 、「移植臓器不足解消」などの成果が生まれることが期待できます。そして、その先には実現目標として「食料危機・飢餓対策」、「サーキュラーエコノミーの実現」、「生産性向上」、「バイオ生産革命」、「バイオ技術の大衆化」、「医療の発展」があります。

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