海外調査報告書
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科学技術・イノベーション動向報告 カナダ編

エグゼクティブサマリー

カナダは、過去20年においてG7諸国の中で最も高い人口増加率とGDP成長率を誇り、確かな成長を続けている国である。この成長を支えているのは、天然資源を始めとする地理的な優位性に加え、移民政策の積極的な推進、科学技術・イノベーションの発展を促す取組、戦略的な国際連携といった点が挙げられる。しかし、人口が比較的小規模であり、研究開発費も大きくないことから統計的な優位性が見えづらく、カナダが秘める科学技術・イノベーションの真の力が見過ごされている可能性がある。米国や欧州諸国からの物理的・言語的な距離が近いことに加え、世界中からの移民により構築されるグローバルなネットワークは、将来の国際頭脳循環のハブとして重要な地位を占めることが予想できる。これは日本にとってますます重要なパートナーとなり得ることを意味しており、カナダの科学技術・イノベーション動向を把握することは、我が国の国際戦略を考える上で不可欠と言っても過言ではない。

CRDSでは以前、「科学技術・イノベーション動向報告 カナダ編(2016年度版)」を公表し、カナダの本分野の動向について概説した。当該報告書が公表されて以降、AIや量子技術といった新興技術の急速な発展、COVID-19による影響、地球温暖化に伴うクリーンテックの需要の高まり等、カナダや国際社会を取り巻く環境は大いに変化した。このような変化に対応すべく、連邦政府からAIや量子技術といった個別の技術・研究分野の国家戦略が次々と発表された。また、人材と知の基盤となる大学や博士号取得者を含む多様な人材が活躍する非営利法人が、カナダのイノベーション・エコシステムの中でさらに重要な役割を担うようになった。加えて、人口規模・経済規模が異なる各都市においてそれぞれユニークなエコシステムが発展しており、地方創生の観点からもますます興味深い様相を呈している。このような状況変化や最新の取組を体系的にアップデートすることで、二国間あるいは日加を含む多国間のよりよい関係の構築に繋がるとともに、我が国のさらなる発展のための重要な示唆を見出せるのではないかと考え、本報告書をまとめることとした。報告書の構成と主な内容を以下に示す。

第1章 概要
カナダの一般的な国情を概観し、経済状況や主要国との関係、カナダが抱える特有の事情について説明

第2章 科学技術・イノベーションの概要
カナダの科学技術・イノベーションの状況に関する定量的なデータ、主要なステークホルダーについて説明

第3章 科学技術・イノベーションの推進
カナダの科学技術・イノベーション政策における歴史的推移や、現在の横断的な政策(人材育成・確保、世界トップレベル研究拠点の形成やアカデミアに対する幅広い研究支援、商業化支援、研究基盤(研究セキュリティ、オープンサイエンス、研究インフラ、研究支援基金、第三者研究開発機関への支援))について説明

第4章 分野別の政策・取組
AI、量子技術、バイオテクノロジー・健康医療、クリーンテック、原子力、宇宙、海洋・北極、の各分野について説明

第5章 科学技術・イノベーション政策の諸観点
国際戦略・連携(インド太平洋戦略、日本、米国、欧州連合、欧州各国、アフリカ諸国、国際連携を促すプロジェクト)、地域毎の特徴、先住民を含む公平性・多様性・包摂性について説明

第6章 まとめ
上述の内容を総括

本報告書が、カナダの科学技術・イノベーションに関連した活動を深く理解することに繋がり、日本が未来に向かって進むための一助となることを期待したい。

※本報告書の内容及び本文記載のURLは、2024年12月末時点のものです(特記ある場合を除く)。