調査報告書
  • 海外動向

科学技術・イノベーション政策に関する世界の潮流(2024年)

エグゼクティブサマリー

本報告書の主題は、科学技術イノベーション(STI)政策の国際的な潮流や、国家間の相互作用、国際枠組みの動向、国家の枠を超えて活動している国際機関やフォーラムの動向について述べることである。

深刻度を増す地球規模課題、新興技術の急速な発展と社会へのインパクト、国家間の対立激化など、国際情勢が不確実性と複雑性を増す中、第2次世界大戦後から築かれてきたSTI政策の土台が揺らぎつつある。

過去30年間、ほとんどの国において、政府が科学技術イノベーション活動を支援する重要な理由は経済的競争力であった。しかし今日では、経済的競争力だけでなく、持続可能性、レジリエンス、生活の質、安全保障などの世界的な課題に対処する必要性から、STI政策は産業政策、安全保障政策、外交政策と重畳しながら変化を続けている。STI政策の目指す価値やシステムが変革を迫られる中、各国政府は、STI政策と安全保障、産業、外交といった重要な戦略・政策を密に連携させ、多岐にわたる内外課題の解決に対処するという新たな方策を採るようになっている。


図1 第2次大戦後の科学技術イノベーション政策の歴史的変遷

こうした状況下で、世界のSTI 関連組織は、様々な取組や連携を通じて、科学、技術、イノベーションシステムの確立を試みている。安全保障上重要な新興技術や基盤技術については、価値を共有する国との間では連携を強化する一方で、持続可能な開発目標(SDGs)の実現、気候変動対策、新興感染症対策などのグローバル課題に対しては、地政学的ライバルも含む全世界での連携も必要とされている。さらに、経済や政治の面で存在感を増すグローバルサウス諸国との国際協力を促進する動きもある。


図2 STI関連組織の世界的相関

本報告書では、近年の諸外国・地域・国際フォーラムなどが掲げる戦略や取り組みを概観し、STI政策及び外交の観点からダイナミックな動向をとりまとめた。本報告書が、国家戦略や政策における科学技術の世界的な重要性の高まりを認識するとともに、我が国が採るべき方策を検討する一助になれば幸いである。

※本文記載のURLは2023年12月時点のものです(特記ある場合を除く)。