Beyond Disciplines
  • 横断・融合

Beyond Disciplines ~CRDSが着目する研究開発の潮流2024~

エグゼクティブサマリー

JST研究開発戦略センター(CRDS)は、国内外の社会や科学技術イノベーションの動向およびそれらに関する政策動向を把握・俯瞰・分析することにより、科学技術イノベーション政策や研究開発戦略を提言し、その実現に向けた取り組みを行っている。本報告書は、その活動で見えてきた研究開発の動向の中から、2023年末時点の状況を加味して注目すべき項目を抽出したものである。

取り上げたトピックには、ここ数年で急速にスポットライトが当たってきたトレンドもあれば、10年程前からCRDSが注目してきた動向がより重要性を増しているものもある。どんな研究テーマにどんなブレイクスルーがあり、それによって世界がどう変わろうとしているのか。研究開発を駆動する社会からの要請にはどんな変化が見て取れるのか。

個々の詳細は研究開発の俯瞰報告書や戦略プロポーザルなど当センターの各発行物を参照いただくこととし、本報告書では今日の研究開発の大局的な変化を「潮流」として捉え、そのラフスケッチを描くことを意図した。


図1 CRDSの活動と本報告書の位置づけ

報告書の構成

はじめの2章では、今日の研究開発を牽引する社会からの要請を概観する。第1章では、研究開発が持続可能な社会への移行(トランジション)という大きな目的に駆動されていること、第2章では、それとともに不確実性を増す世界への備えや対処、技術のガバナンスが求められていることを見ていく。

こうした社会からの要請とともに、新たな発見や発明といったシーズを駆動力としながら科学と技術は高度に進歩してきた。第3章では生命科学と医療、第4章では材料科学と製造技術における動向を概観する。

研究開発によって生み出される新しい技術は、社会を変えるとともに研究開発自体のありようにも変革をもたらしている。第5章では、機械による様々な人的作業の自動化を目指すAI・ロボティクス技術によって科学そのものが変貌を遂げつつあることを見る。第6章では、近年の多くの技術的革新の前提条件となるコンピューティング(計算)に焦点を当て、その革新を目指す研究開発の動向を概観する。

研究開発を方向づける社会的な期待や、その中で実現してきた技術の進化、また研究開発の方法論やインフラにおける進歩と同じく重要なトレンドとして、最後の第7章では、イノベーションの生み出し方に見られる変化に着目する。


図2 本報告書の見取り図

本報告書は、研究開発の動向の2024年初旬時点でのスナップショットを切り取り、かつ定性的に記述したものにすぎない。関心のあるテーマについては、ぜひ個別領域の戦略提言に踏み込んだCRDSの様々な発信・報告書を参照いただきたい。研究開発の実務、企業経営、政策立案など、様々な場面で科学技術に関わる皆様に、研究開発の潮流・動向を横断的に概観し、議論や考察を深めるためのツールとして本報告書を活用いただければ幸いである。

※本文記載のURLは2024年2月時点のものです(特記ある場合を除く)。