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現実空間を認識し、臨機応変に対応できるロボットの実現に向けて
エグゼクティブサマリー
本報告書は、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が令和4 年2月24日に開催した「現実空間を認識し、臨機応変に対応できるロボットの実現に向けて」の内容をまとめたものである。
ロボット技術は日本が直面する社会的課題の有効な解決手段の一つと期待され、様々な将来像が提示されている一方で、現状のロボット技術は我々が生活している「開かれた環境」での非定型作業を苦手としており、期待との間に大きなギャップが存在している。 このような現状を踏まえ、CRDSでは、今後取り組むべき重要な研究開発課題と実施体制・仕組みなどを検討・議論し、以下のような仮説をまとめた。
- 「開かれた環境」に対応できるロボットの研究開発には、柔軟性をもたせたロボットの統合システム開発と理論的基盤の確立が必要である。
- そのためには、さまざまな異分野からの知見も取り入れる必要がある。
- これらの研究開発を加速するために、オープンな研究の共有基盤である「プラットフォームの整備」、研究のベンチマークとなる「競技会型の研究開発の推進」が求められる。
本ワークショップでは、7件の話題提供と総合討論を通じて、これらの仮説の検証と内容の深化を行った。
第一部「柔軟なロボットの実現に向けた研究について」では、実世界と学習モデルとの誤差を最小化する適応的な学習法の応用事例、ロボットが環境との相互作用から概念を獲得する統合的認知モデル、四脚ロボットの脚間協調制御の事例、相互作用の積極的活用による無限定環境への対応など4件の話題提供があった。
続く総合討論では、環境に対して受動的な「柔軟性」に加えて、能動的に環境を利用する「適応性」の重要性が示唆された。また、社会への適応まで考慮した研究テーマを設定すべきとの指摘を受けた。適応すべき環境として、野外から都市内、屋内まで様々な環境が想定され、環境に応じて適応するためのアプローチも異なることが示唆された。
第二部「柔軟なロボットの社会実装に向けた仕組みについて」では、プラットフォームロボットを用いた共創的研究の事例、競技会を通じたロボットの基礎研究推進に関する事例、ロボットの社会実装により創出される価値や懸念など3件の話題提供があった。
総合討論では、ロボット競技会が果たす役割として参加者と主催者が一体となったヒューマンネットワークの形成が挙げられた。このネットワークを介して個々の研究者が抱えている課題が広く共有され、異分野との連携の場になると考えられる。また、研究開発を行っているロボットがどの様な社会課題解決につながるのか、社会にどの様な影響を与えるのか、基礎研究段階から検討することが重要であるとの指摘がなされた。
ワークショップでの議論を踏まえ、CRDSでは今後国として重点的に推進すべき研究領域、具体的な研究開発課題を検討し、研究開発の推進方法も含めて戦略プロポーザルを策定し、関係府省や関連する産業界・学界等へ提案する予定である。
※本文記載のURLは2022年6月時点のものです(特記ある場合を除く)。