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オープン化、国際化する研究におけるインテグリティ2022-我が国研究コミュニティにおける取組の充実に向けて-(—The Beyond Disciplines Collection—)

エグゼクティブサマリー

研究のオープン化、国際化に伴うリスクへの対応の強化の必要性が国際的にも広く認識され、利益相反に重点を置いた研究インテグリティの強化は、研究セキュリティ強化のための有効な手段であるとの認識が国際的に共有されつつある。

我が国においても、2021年4月に政府が決定した研究インテグリティの確保に係る対応方針において、利益相反に関して、研究者自身による適切な情報開示、大学・研究機関等のマネジメント強化等に取り組むこととされた。
現在、大学・研究機関等において、利益相反の管理に関連する規程や体制の整備等の具体的な取組を実行に移していくための準備が進行中の段階にある。
その際、利益相反に重点を置いた研究インテグリティの強化について、我が国には研究セキュリティの強化の観点からは蓄積がないことから、海外の事例も参考にすることが適当と考えられる。

研究セキュリティの強化に、研究インテグリティの強化を中心として研究の側からどのように主体的に取り組んでいくか、研究コミュニティ等による活発な議論が望まれており、それに資することを目的として、研究セキュリティ及び研究インテグリティの強化に向けた海外の政府・資金配分機関・研究コミュニティの動向について調査を行った。

本報告書では、第1章において、利益相反に重点を置いた研究インテグリティの強化に関する最近の国内外の動向を俯瞰する。
また、第2章において、我が国の大学・研究機関等が、研究インテグリティの強化に向け、利益相反の管理に関連する規定や体制の整備をする上で基本的な要素と考えられる7つの事項:
(1)情報を開示する者
(2)開示する情報
(3)開示の時期
(4)開示の方法
(5)開示された情報の審査体制
(6)適切に開示をしなかった場合の罰則
(7)開示を適切に実施させるための支援等
について、海外の大学の取組を参考事例として整理するとともに、留意事項を述べる(本文12,13ページに概要をまとめた)。

利益相反について情報開示を行う対象者や開示の内容等については概ね標準的なルールができつつあり、我が国においても、海外の事例も参考にしつつ、研究コミュニティにおける対応を着実に進めていく必要がある。
一方、開示された情報を基にリスク評価し、対処することについては、各大学・研究機関等の経験を踏まえて案件ごとに判断がなされているものと考えられ、判断基準等は明らかになっていない。研究セキュリティの強化に向け、リスク評価・対処に資する情報の共有を国内外の関係者間で進めるなどの取組が期待される。

※本文記載のURLは2022年4月時点のものです(特記ある場合を除く)。