俯瞰ワークショップ報告書
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連続セミナー:科学技術イノベーションによる社会的・経済的価値創造のエコシステム形成へ向けて

本報告書は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が2021 年7月から2021 年10月まで、全18回にわたって開催した『連続セミナーシリーズ:科学技術イノベーションによる社会的・経済的価値創造のエコシステム形成へ向けて』に関するものである。

わが国の科学技術イノベーション政策の大きな課題の一つが、民間企業、政府、公的機関、大学、金融機関、投資家、市民社会など、多様なアクター間の相互作用のもとに社会・経済的価値を創出する「イノベーションエコシステム」を構築することにある。エコシステムの機能の仕方や、そこで生まれる価値や相互作用の種類は多種多様であるが、大学等アカデミア発の技術の事業化・産業活用(商用化、commercialization)は、その重要な部分をなす。つまり、大学や公的研究機関で生まれた研究成果を産業界へ受け渡す、あるいは大学等と産業界が協働して社会・経済的価値を生み出す諸活動である。

JST-CRDSでは、産学連携の主要な部分である(1)アカデミアの特許を介した技術移転と(2)大学発スタートアップ創出に特に着目し、2021 年度時点での状況把握を試みるべくセミナーシリーズを開催した。
知的財産、大学発ベンチャー、起業・支援、VC、スタートアップエコシステム形成、産学連携拠点、アントレプレナーシップ教育等に携わる、研究者・実務家・専門家の講師18名を招き、それぞれの経験・専門から見た最新の状況認識や課題意識について話題提供いただき、議論を行った。

各セミナーからは、①大学の知財マネジメント、②技術移転パフォーマンス向上、③国・公的ファンディング機関の各種支援事業や評価、④起業・産学連携への研究者の意識やインセンティブ、⑤スタートアップの経営人材確保、⑥橋渡し人材の育成・評価・待遇、⑦地方におけるリソース確保、⑧産学官の越境といった多様な観点からの課題が見えてきた。

本セミナーシリーズにて提起されたこれらの課題は、従前から議論されているものも含めて、今日の日本の科学技術イノベーションエコシステムが直面しているリアルな課題であると言える。ここで得られた知見をもとに、CRDSではさらに独自の調査と考察を加えた報告書をとりまとめる予定である。

※本文記載のURLは2022年1月時点のものです(特記ある場合を除く)。